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A-1話「掃除屋」
A-4話「歴史書」 A-5話「町工場」 A-6話「」 *** ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= *** スターテイル A-5話 「町工場」 *** ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= *** 軒先の人に渡す。 ポストに入れる。 歩く、走る、曲がる。 これで最後だ。 手元にひとつ残った新聞を、郵便受けにねじ込む。 僕はいつものように、配達を終えた。 今日は、給料日だ。 試用期間が終わって、明日からは配達戸数あたりの給料を、上げてくれると言っていた。 今日の給料はまだ安いが、よく働いているから、ボーナスを少しくれるそうだ。 でも、貧乏だからな。たぶん、お金ではないだろう。 先輩のお下がりで、なにかカバンでも、貰えるんじゃないかな。 僕は営業所に戻り、荷物を片付けた。 眼鏡に付いた砂埃を拭き取る。 所長はどこに行ったんだろう? 営業所を出た時には、所長は忙しそうに何か計算をしていた。 誰か、支払いを滞納していたのかな。 所長にとって、新聞代の滞納者に取り立てに行くのは、いつものことだった。 「お疲れ様です!」 後ろから、誰かに声をかけられた。 振り返ると、見たことのない男が立っていた。 黒い髪の男だ。 年は、二十代前半くらいだろうか。 この街ではあまり見かけない、しっかりとした黒いスーツを身に纏っていた。 靴も黒いし、カバンも黒い。その男は黒ずくめだった。 「こんにちは。私は、『災害事故調査室』の者です。」 男は、名刺を翳しながら、胸元のバッジを摘んで見せた。 「災害事故調査室?」 こんなところに、何の用だろうか? 「所長なら、いませんよ。」 「ああ、そうですか……どのくらいで戻るでしょうか?」 男は、苦笑しながら言った。 「さあ、わかりません。でも、昼ご飯は必ず食べる人ですよ。昼には戻るかも。」 「うーん、昼まで待つしかないですか……仕方ない。」 「僕でよければ、話を聞きますよ。」 「おお、助かります。私は、この前の『イエロー・スラッグ』の事故で、目撃者を探しているんですよ。」 あの飛行機の事故か。新聞の一面に載っていた事故だ。 ここ数日は、その話題で持ちきりだった。 「それで、この街の話を聞かせて欲しいんです。新聞屋さんなら、地域のことに詳しいと思って。」 「はい。いいですよ。今日の仕事は、終わりましたから。」 「本当ですか?」 「ええ。」 「ありがとうございます。それじゃあ、こちらへ……」 男の後に付いて行くと、近くの喫茶店に入った。 「コーヒーをふたつ、お願いします。」 「コーヒー、僕は苦手なんですよ。水でいいです。」 「おや、そうでしたか。これは失礼しました。」 男は、さらにサンドイッチをふたつ注文した。 不愛想な店員は、メモを取ると、無言で店の奥に去って行った。 「それで、聞きたい事って?」 「はい、この街のことを、お尋ねしたいのです。ここ数日で、変わったことはありませんか?」 「変わったこと?」 「例えば、事件があったとか、知らない人が歩き回っているとか。普段と違うことです。」 「うーん、事件は、とくにないですよ。それと、知らない人なら、たくさん歩き回っています。」 この街は、宿場町だった。 この土地は、特に何もない場所だ。 しかし、交易のためのキャラバンや、帝国軍の連絡隊、遺跡の発掘団など、様々な移動ルートの交差する場所だった。 何もなかったこの土地は、交通の要所として、発展を遂げていた。 人の行き来の多いこの街では、知らない人が歩いていることは、普通のことだった。 「配達で歩き回っていて、世間話もするけど、目撃者とかも、特にいなかったと思いますよ。」 「そうですか……。」 男は残念そうだった。 「災害事故調査室って、どこにあるんですか?」 「首都ですよ。ペロタンの向こうです。」 「そんなに遠くから?」 首都は、西のクレーターの向こう側にある。 「ええ、でも、『イエロー・スラッグ』の事故現場よりは、近いですから。」 そういえば、事故現場は東のほうだった。 「東のほうから来た旅行者を見た覚えはないですか?大きな荷物を持っていたとか。」 「ああ、それならいたと思いますよ。関係あるか、わかりませんけど。」 あの宿屋にいた、三人組。 一人乗りのバイクに荷物を載せて、買い物をしていたな。 楽しそうに服を買っていて、とても事故や事件には関係なさそうだったけど。 「本当ですか?少しの情報でも助かります。ぜひ案内してください。」 「わかりました。まだ宿屋にいると思いますよ。」 僕は、調査室の男を案内するために席を立った。 「あなた、フェブリフじゃない?こんなところで合うなんて、奇遇ね。」 道を歩いていると、後ろから女の声がした。 振り向くと、透き通るような青い眼の、金色の長い髪の女がいた。 長耳の人だ、珍しいな。 多くの人が行き来するこの街でも、あまり見かけることはなかった。 「あれ、副室長。なぜここに?現場に行ったのでは……」 調査室の男は呆気に取られているようだった。 「また、抜け出してきたんですか?」 「ええ、スイートポテトを食べに来たの。ここの名物よ。」 女は有名な菓子店の紙袋を男に掲げて見せた。 香ばしい、いい匂いがする。 サンドイッチを食べたばかりだが、もうお腹が空いてきた。 「副室長、そんなことしてる場合じゃないですよ。今回の事件は……」 「どう?何か手掛かりは見つかった?」 「ああ、はい、この子に連れて行ってもらうところです。」 「この子に?」 女は僕の顔をじっと見つめてきた。 「東から来た三人組がいると言うので、一応話を聞いてみようかと。」 「へえ、何か聞けるといいわね。私も付いていこうかしら。」 「はい、お願いします。ちょっとは働いてくださいね。」 女も付いてくるようだった。 男の上司のようだが、スイーツを食べ歩いて仕事をサボっているような適当な女だ。 堅い雰囲気だったが、この女が混ざってきたことで少し気楽になった。 *** ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= *** 土と金属と油の匂い。 オレとラジィを乗せたバイクは、大通りから離れ、少し奥まった路地を進んでいた。 自動車は高級品だ。あまり綺麗な新品の車を乗り回していたら、不審に思われる。 なるべく見た目がボロボロで、中身はしっかりしている中古の車を探して買うことにした。 かっこいい車を欲しがっていたフロマージュは、不服そうだった。 しばらく新作の車をプレゼンしていたが、彼女は諦めて留守番をすることになった。 「……ここかな?」 ラジィはバイクを止めた。 オレたちは、とある町工場の前に立っていた。 崩れた壁と屋根の隙間から、薄暗い光が差し込んでいる。 ここなら、朝早くから職人が働いていると聞いていた。 ジャンク品を集め、修理して組み立てた車を売っているらしい。 オレが砂漠の掃除屋をやっていた時も、こういったボロボロの工場に、よくジャンク品を売っていた。 ラジィは工場の扉を開け、顔を突っ込んだ。 「すみません、誰かいますか?」 声が響く。砂漠で朽ち果てた廃墟のように、静かだった。 「誰もいないみたい。」 「おかしいな。扉には鍵が付いているのに、かかってない。」 「出かけてるのかな?」 「待っていれば戻ってくるかもしれない。ここで待つことにしよう。」 「うん、そうだね。」 オレたちは、入り口の前でしゃがみこんだ。 辺りを見回すと、壊れた車や、エンジンのようなものが転がっている。 今は、完成品は無いのだろうか? 工場や、別の倉庫の中にあるのかもしれない。 工場の中を見てみようかとも思ったが、勝手に入るのはまずい。 大人しく、時間を潰すことにした。 「どんな車にするんだ?」 「えーっと、荷物が載せられれば、大丈夫だよ。あとは、壊れにくいのがいいかな。」 「速さとかは、いいのか?」 「うーん、速い方がいいんだけど、でも、目立っちゃうよ。」 「なんだ、そんなこと気にしてるのか。大丈夫だよ。速く走れる車でも、ゆっくり走ればいいだけじゃないか。」 「ダメだよ。私、運転ヘタだから、そういうのできません!」 そういえば、いつもバイクのアクセルはベタ踏みだった。 車なんて運転して、大丈夫なのかな……。 バイクに乗れるのはラジィだけだったから、今までラジィが運転していたけど。 車を買ったら練習して、オレかフロマージュが運転したほうが、いいかもしれない。 「車が用意出来たら、どこに行く?元々は、どこに行くつもりだったんだ?」 「首都のほうに、魔法の学校があるんだ。そこで勉強しようかなって。」 ラジィは、魔法使いになるために、魔法の勉強中と言っていた。 世界を救うために、偉大な魔法使いを目指しているそうだ。 「学校って、行っても大丈夫なのか?ちゃんと入学できるのか、わからないだろ。」 「わからないよ。だから、行ってみるの。」 「そんな遠くまで、わからないけど行ってみるのか?」 「だって、他に何も思いつかないよ。」 「まあ、そうだけどさ。」 ラジィは、行動してから考えるタイプらしい。 オレたちが初めて会った時も、そうだった。 どうするのか方法も聞かずに、フロマージュの言う通りにして、一緒にバケモノを倒したそうだ。 オレはその時、悲鳴を上げながら逃げまわったり、気を失っていたから、見ていないが……。 一緒に行動したり、話をしていると、ラジィは確かに、そんな感じだ。 人の言うことをすぐに信じて、疑わないようだ。 「それに、私、もっといろんな世界を見たいし。他の国にも行ってみたいな。」 「じゃあ、旅しながら自分で勉強すればいいんじゃないか?オレも付いていくし。」 「えっ、付いてきてくれるの?」 「当たり前だろ。オレも、他に何も思いつかないからな。」 「えへへ、ありがとう。」 ラジィはこの後も、人助けのために、魔法の勉強を続けるらしい。 フロマージュは、どうするつもりなんだろう。 殺された人形師とは、仲が良かったのかな? だとしたら、その犯人は、仇ってことになる。 犯人を、捜しているのかな。それとも、盗まれた人形だろうか。 たぶん、どっちもだろう。 旅をしながら、一緒に探してやろう。 ふたりの目的は、だいたい、わかった。 問題は、オレ自身だ。今言った通り、何も思いつかない。 だが、それは仕方ないと思った。 ずっとゴミを漁って売るだけの生活だったオレは、世の中のことを何も知らなかった。 今日、明日、明後日をどうやって食っていくかで精いっぱいで、それ以外、考えたことがなかった。 ふたりと一緒に旅をしながら、考えよう。 こんな奴らからは、そのうち逃げ出すつもりだった。でも、それは、しばらく後回しになりそうだ。 オレたちは、工場の前で座ったまま、話をして時間を過ごした。 しかし、結構時間が経ったが、人が戻ってくる気配はない。 「まだ、来ないのかな?」 「もう、一時間は経ったぞ。変だな。」 少し、嫌な予感がした。 何か事件でもあったのだろうか。 「ちょっと、中に入ってみよう。病気で倒れてるのかも。」 「そうかも!じゃあ、急いで見てみよう。」 「ああ、行こう。」 オレとラジィは立ち上がり、工場の中に足を踏み入れた。 中は薄暗く、埃っぽい匂いが充満していた。 「誰もいないね。」 「うん、どこにいるんだ?」 工場の、埃や油の匂いに混じって、変な匂いがした気がした。 何かの薬品かもしれない。ここは工場だ。机や棚には、触らないように気を付けた。 工場の中には、様々な箱や機械があった。 ゴミ漁りで見たことがあるような気がするが、それが何なのかは知らなかった。 オレたちは、奥へと進んだ。すると、突然ラジィが大きな声で叫んだ。 「待って!」 オレは、声に驚いて、立ち止まった。 そして、後ろを振り向くと、そこには黒い大きな塊があった。 「なんだ!?」 オレが叫ぶと、ラジィがオレの腕を思いっきり引っ張る。 「動かないで!」 ラジィに引っ張られて、後ろに下がる。 すると、その黒い物体は動き出し、こっちに向かってきた。 ラジィが前に出て構えると、呪文を唱えた。 左手の指輪が、赤い光を放つ。 「星よ集まれ!獣よ歌え!牙の輝きよ、光の矢となりて……」 黒い影が、視界を横切った。 出来上がりつつあった赤い光の矢は、砕け散った。 代わりに赤い鮮血が視界を染め上げる。 黒い影は、ひとつではなかった。 明かりの無い工場の闇の中には、無数の目が光っていた。 そのバケモノは、 魚の形に似ていた。 *** ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= *** A-1話「掃除屋」 A-4話「歴史書」 A-5話「町工場」 A-6話「」 PR
A-1話「掃除屋」
A-2話「厄介者」 A-3話「人形師」 A-4話「歴史書」 A-5話「町工場」 *** ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= *** スターテイル A-4話 「歴史書」 *** ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= *** 忙しそうに歩き回る者。苦しそうに眉を顰めて書類を見つめる者。 装置の作動音と、ペンを走らせる音だけが静かに響いている。 「いったいどこに行ったんだ?もう、何日も戻ってこないじゃないか。」 男は不機嫌そうに、ここにいない人間の文句を言う。 男の名はセイファート。 この国で最も権威のある科学者であり、優秀な技術者でもある。 この男は今日も、特に用事もないのに、調査室に文句をつけるために来ている。 いつも不機嫌そうな顔をしているが、内心、不祥事のネタが手に入ることを喜んでいる。 調査員たちは皆、そのことをよく知っていた。 「副室長ですか?会議とか、言っていたような……」 「さっき、そこにいませんでした?」 調査員は皆、適当な言い訳で済ませている。 副室長はいつも勝手にいなくなる。もう慣れたものだった。 しかし、今回は違う。今までとは違うのだ。 「本当に、どこへ行ったんだ?」 この男が、こんなに副室長を探しているのには、いつもとは別の理由がある。 実は、数日前、とんでもない事件があった。 『生きる歴史書』と呼ばれる天才考古学者が殺され、大量の先史遺産が奪われたのだ。 この事件で帝国軍は大混乱に陥り、戒厳令が出た。 先史人類による超科学。先史遺産は危険な存在であり、厳重な警備が敷かれていた。 それが破られたのだ。警備を怠っていたわけではなかった。 部屋から出てこないのを不審に思った召使いが、部屋の鍵を開け、発覚した。 その時、考古学者は既に、焼け焦げた死体となっていた。 墜落した『イエロー・スラッグ』の調査も重要だ。 だが、『生きる歴史書』の事件のほうが、事態は差し迫っていた。 あの量の先史遺産があれば、小さな国ひとつ滅ぼすことなど、訳はない。 考古学者が研究していたそれらの先史遺産は、武器や兵器ではなかった。 一般の家庭で使うような農機具や、スポーツ用品の類だ。 しかし、この時代の人類の技術からすれば、その性能は真に恐るべきものだった。 エネルギー出力も、耐久力も、まるで格が違う。 顧客に配慮された設計のため、使用者の身の安全は保障されている。 現代の武器では、いくら攻撃しても、使用者に汚れひとつ付けることもできないのだ。 先史遺産には、先史遺産でしか対抗できなかった。 「まさか、王国が戦争を仕掛けてくるなんてことは、ないだろうな……」 セイファートは不安そうに呟く。 広大な海を支配する、海の王国『クロアキナ』。 帝国と王国は、直接の戦闘はなかったものの、昔からずっと、いがみ合っていた。 王国は、最近やけにおとなしかった。 先史遺産を奪う好機を窺っていたのでは……。 男は、自分の席に戻り書類を確認し始めた。 仕事のできない人物。 実力は間違いないが、その功績はほとんど人から奪ったもの。 副室長が室長にならないのにこの男が室長の座に就かないのは、この男が要職に向かないからだった。 上の命令通りに従順に動いているだけのセイファートは、上層部からも信用されていなかった。 立て続けに起こる異常事態への対応は、この男では全く手に余った。 今回は本当に、ほとほと困っていた。 助けてくれ、副室長……。 頼む!早く帰ってきてくれ! セイファートは、溜まった書類を特に処理するでもなく、ただ天に祈っていた。 *** ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= *** まだ太陽が昇っていない薄暗い空が、わずかに青い輝きを取り戻していく。 ここは宿屋の一室。オレは、ベッドの上で目を覚ました。 昨日は街を歩き回り、ずっと荷物持ちをさせられていた。 あの後、オレは疲れて眠ってしまったようだ。 服は、元通り着せ替えられていた。 寝ている間、ずっと変な格好をさせられているのは、流石に不憫だと思ってくれたのか。 街を歩いている間は、ふざけた格好を晒し者にされていたわけだが……。 散々玩具にはされていたが、悪い気はしなかった。 怒鳴られたり殴られたりしない。 憲兵や他の掃除屋から追いかけられたりもしない。 ゴミを漁ったりドブに潜ったりしなくていい。 平和な時間を過ごすのは初めてだった。 いつでも逃げる機会はあった気がするが、逃げようとは思わなかった。 こうやって安らかな時間を過ごすのが、本来の人間の生活なんだと感じた。 しかし、そんな甘い考えをしている自分が、嫌だった。 人間なんて、自分のために人を傷つけるし、簡単に裏切るものだ。 オレだって、今までたくさん、他人を騙し、盗み、傷付けてきた。 今更、平気な顔をして普通の人間のように振舞う気にはなれなかった。 約束だけ済ませたら、さっさと逃げてやる。こんな変な奴らと、つるんでいられるか。 金を出してくれるから、言うことを聞いているだけだ。そう自分に言い聞かせた。 まだ太陽は昇っていない。ふたりはまだ寝ているようだ。 二度寝しようかと思ったが、どうもしっかりと目が覚めてしまったようだ。 朝の空気でも吸おう。 オレは部屋から出て、外を歩くことにした。 少し歩いたところで、声をかけられた。 「おはようございます!」 元気よく挨拶してきたのは、小さい男の子だった。 眼鏡の少年だ。 新聞をたくさん持っている。新聞配達をしているらしい。 「あぁ、おはよう。」 「はい、この宿屋の分!」 「そうか、オレが渡しておくよ。ありがとう。」 男の子から、新聞を受け取った。 ちょっと読んでみようかと思ったが、オレは字はほとんど読めなかった。 全く読めないわけではない。 漁ったゴミが金目のものかどうか、判別するために必要な知識だった。 しかし、ラベルや刻印の単語を読むくらいで、文章を読んだことはなかった。 オレは、写真だけ見てみることにした。 「あ、これは……。」 写真には、見覚えのあるものが写っていた。 「『イエロー・スラッグ』墜落」 あの飛行機の墜落事故の記事のようだった。 憲兵か何かが、捜査しているんだろうな。 俺たちが犯人だと思われないだろうか? 少し心配になった。 まさか、そんなことないか。 「その写真に見覚えがあるみたいね。」 聞き覚えの無い女の声がした。 振り向くと、声の主は、オレのすぐ後ろにいた。 「うわ!誰……。」 思わず飛びのいた。 だが、それより早く、肩を抑えられ、口を塞がれた。 「大きな声で騒がないで。困るのはあなたたちよ。」 「……?」 オレは、恐る恐る女を見た。 女は、背が低く、透き通るような青い眼と、金色の長い髪をしていた。 そして何より特徴的なのは、その長い耳だった。 噂には聞いたことがある。 長耳族と言われている種族だ。正式名称は、知らなかった。 「大丈夫かしら?手を離すわ。騒がないでね。」 オレは小さく頷いた。 すると、女はあっさり手を離した。 「単刀直入に聞くわね。あなたたちが、『イエロー・スラッグ』を墜としたの?」 「え……?」 突然のことに、困惑する。 まさか、本当に憲兵が来たのか? だが、目の前の女は憲兵には見えない。 オレは、正直に答えるべきか迷ったが、黙っていることにした。 女は、自分がどうやってここに来たのか、話し始めた。 「私はこの国の災害事故調査室で、副室長をしているの。事故や事件を調べる仕事。」 「『イエロー・スラッグ』の事故も、うちが調査を担当することになったわ。」 「でも、軍が一番大事な証拠を持って行っちゃったのよね。それじゃあ、まともに調査できないじゃない。」 「それで、まともに調べるのはやめて、現場の周りをうろついてたの。」 「歩き回ってたら、見つけたのよね。消えかけてるバイクのタイヤの跡。」 「タイヤの跡を、辿ってきたのよ。そしてこの街にね。そうしたら……。」 「一人用のバイクで歩き回って、たくさん買い物をしている三人組がいたの。変よね。」 「あなたたちよね?あの現場にいたのは。」 あのふたりは、荷物が人に見つからないように気を付けているようだった。 余計な事を話せば、ボロが出るかもしれない。 オレはまだ、黙っていることにした。 口止めはされていないが、公にバケモノの話をするのは、避けたほうがいいと察していた。 「あなたたちが何者でも、大丈夫よ。軍や憲兵に突き出すつもりはないわ。」 「……。」 「お金に困っていないかしら?隠れる場所とか。」 「?」 よくわからないことを言い出した。 犯人を捜しに来たんじゃないのか? この女の目的がわからなかった。 「何か困ったことがあれば、ここに連絡して。」 メモを渡してきた。 『災害事故調査室』と書いてある。それと、番号が二種類と、長い文字列。 「電話番号と、郵便番号と、住所。いつでも大丈夫よ。」 さらに、分厚い封筒も渡してきた。 「お金が入っているわ。好きに使ってね。」 ますます意味が分からない。 なぜ、怪しい三人組に、金や連絡先を渡すのだろうか。 「この街だと、四番街のあたりは、避けたほうがいいかしらね。憲兵が多いから。」 「一人乗りのバイクは、やめたほうがいいわよ。もっと大きな車にしなさい。そのくらいあれば、足りるわよね。」 「職業も、紹介してあげる。別に働かなくても、お金だけあげるけど。ただでお金を受け取りづらいものね。」 「『イエロー・スラッグ』の調査情報で、知りたいことがあれば、あとで教えてあげる。他の事件でもいいわよ。」 次々と意味の分からない言葉が口から出てくる。 ついに、オレは声に出してしまった。 「なんでだ?お前は、何がしたいんだ?」 女は答えた。 「本当のことを、知りたいだけよ。憲兵が絡むと、面倒臭いもの。」 「調査室って、国の仕事じゃないのか?こんなことをして、いいのか?」 女は首を傾げた。 「ダメに、決まってるじゃない。」 「今回も、帰ったら怒られるわね。」 女はため息をついた。 「国なんて、知らないわ。私は私のやりたいようにやるだけよ。」 「なんなんだ、一体……」 「オレたちを捕まえないのか?」 「捕まえてほしいなら、そうするわよ。」 「……。」 「あなたたちのことは、誰にも言わないし、通報もしないわ。安心して。」 「……わかった。」 オレは、女を信じることにした。 「オレは、パニールだ。あんたの名前は?」 女は、少し考えてから言った。 「私は、ミュース。また会いましょうね。パニールくん。」 女は、あっさりと去って行った。 「何だったんだろうね?」 「さぁ……え?」 「まあ、いいか。ラッキーだね。お金をたくさん貰えて。」 聞き覚えのある女の声がした。 振り向くと、声の主は、オレのすぐ後ろにいた。 「うわ!いつのまに……。」 思わず飛びのいた。 だが、それより早く、封筒を抑えられ、奪い取られた。 「大きな車がいいね。荷物の置き場に困らないし。」 「……?」 オレは、恐る恐るフロマージュを見た。 「背が高くて、悪路でも走れるタイヤと、長い走行距離が欲しい。」 「そして何より大事なのは、乗り心地。」 「この町の近くには、工場があると聞いたよ。行ってみよう。」 フロマージュは、どんな車を買うかを考えるのに、夢中なようだった。 *** ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= *** A-1話「掃除屋」 A-2話「厄介者」 A-3話「人形師」 A-4話「歴史書」 A-5話「町工場」
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A-2話「厄介者」 A-3話「人形師」 A-4話「歴史書」 *** ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= *** スターテイル A-3話 「人形師」 *** ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= *** 赤く輝く地平線。 鋭く照りつける太陽と裏腹に、風は冷たくなっていた。 雲ひとつない空に、星々が輝き始める。 前方のタイヤの跡を辿り、自らの足跡とともに後方の痕跡を消していく。 光が影と変わる中、ひとりの調査員はゆっくりと歩みを進めていた。 彼女の名は『ミュース』。 この国の捜査機関、災害事故調査室。その副室長を務めていた。 しかし今はその肩書きとは関係なく、彼女はただの興味本位で動いている。 彼女は優秀な調査官であり、優れた洞察力を持っていた。 その能力を、椅子に座っているだけのお偉方のために使うつもりはなかった。 それに、彼女には彼女の目的がある。 調査員という仕事は、そのために都合が良かった。 副室長から昇進できないのは、妨害されていることもあるが……。 彼女自身、それほど高い地位に就くことを求めていなかった。 あまり責任の重い役職では、自由に動けない。 権力が必要になる時期もいつか来るとは考えていたが、まだその必要はなかった。 「そろそろ、大丈夫かしら。」 歩いてきた道を振り返る。 尾行は無いようだが……それよりは、偶然に目撃されることが厄介だ。 神経を集中し、注意深く辺りを見回した。 広大な闇の中で、わずかな星の灯りが景色を浮かびあげる。 時の止まったように動かない黒い世界。 宇宙に鏤められた色とりどりの星だけが、静かに廻っていた。 誰もいない。虫一匹の気配も感じられない。 透き通った青い眼が前方を見据える。 突然、大きく、大きく砂煙が上がると……。 彼女は、忽然と姿を消していた。 *** ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= *** 「この服、似合うんじゃない?ほらほら、着替えてみて!」 「いや、それは、女の子の服なんじゃ……」 「いいんじゃないかな?男が女の服を着ても。」 「断固拒否する。」 「抵抗しても無駄だよ。」 「脱げー!」 「ぐえっ……」 いったい、なにをしているんだろうか……。 オレは、街の服屋で着せ替え人形になっていた。 結局、あれからの数日間、こいつらと行動を共にしている。 宿屋を見つけたり、医者に行ったり、飯を確保したり……。 そして今、服を買いに来ている。 全員、服がボロボロだったからだ。 「怪我はもう大丈夫?」 「ああ、おかげさまで。」 「そっか。それなら、よかった。」 そう言って、少女は微笑む。 その顔に少しドキッとしたが、すぐに我に返った。 「お前はどうしてこんなところにいるんだ?旅をしてるのはわかるけど……。」 「私は、世界を救いたいの。」 「どういうことだ?」 「バケモノに襲われて、死ぬかもしれない。そんな状況になったとき、君も私と同じことを思ったでしょう?『死にたくない』って。」 オレは黙ってうなずいた。 「みんなそうなんだよ。だから、魔法の勉強を始めたんだ。」 「自分の命は自分で守るってことか?」 「自分だけじゃないよ、みんなも!」 「ふぅん……」 この少女の言っていることはわかった。 しかし、わからないことがある。 ずっと気になっていた。もう一人のほうだ。 「お前もそうなのか?」 「そうさ。」 「でも、お前からは魔力を感じないぞ?」 彼女は少し驚いたようだった。 オレは勉強なんて何もしてないし、魔法も使えない。 だが、生まれつき、なんとなく魔力を感じることはできた。 彼女は少し遠くを見ながら、答えた。 「僕には魔法の才能が無いんだ。」 「え?あんなに強いのに!」 少女も目を丸くして驚いていた。 「だったら、どうやってあのバケモノを倒したんだ?」 「ううん、それはね……」 返答に困っているようだった。 俺が目を覚まし、初めて見たときから、彼女は常に余裕をもって堂々と話していた。 いつも薄く浮かべていた笑みが、今は失われていた。 「……そうだね。話しておかないと。」 彼女はそう言うと、椅子に腰掛け、真剣な表情になった。 「実はね、僕もわからないんだ。」 「はぁ!?わかんねぇのかよ!」 「まあ、落ち着いて聞いてほしい。」 落ち着けるか!と言いたかったが、我慢した。 彼女が冗談を言っていないことは明らかだ。 「僕は、あのバケモノを作り出した人を知っている。」 「作った人?」 「その人が、倒し方を知っていたんだ。」 「仕組みはわからないけど、倒し方だけ、教えてもらったってことか?」 「そういうことになるかな。」 「じゃあ、その人がバケモノを作って、世の中にバラまいてるのか?」 「違うんだ。」 「作った人なんだろ?だったらそうじゃないか。何が違うんだ?」 別にそんなに、好きな連中ではなかったけど。 一応、一緒に時間を過ごしてきた仲間だとは思っていた。 オレの仲間たちが殺されたんだ。そして、オレも死ぬところだった。 その犯人だ。オレは少し声を荒げた。 「そいつをブッ倒しに行く!どこにいるか教えろ!」 「それは、無理だ。」 「無理じゃないだろ。お前が教えてくれればいいだけだ。なんで隠すんだ?」 「ちょっと、落ち着いて!」 少女が体を押さえてくる。 「わかった、教えるよ。別に、隠してるわけじゃない。」 「早く教えろ!」 「死んだんだよ。」 「え?」 「殺されたんだ。僕の目の前でね。」 「……?」 「そして、みんな奪われていった。」 「みんな?」 「バケモノだよ。大人しい、良い子たちだったんだ。元々はね。」 「どういうことだ?」 「魔法で作り出された、働き者の使い魔だったんだ。その人は、『人形師』として、有名だったのさ。」 人形師。 魔法を使った職業のひとつだ。 人の代わりに働く魔法のロボットを作るのが、人形師の仕事だ。 ただ、彼女の言うその人は、少し違ったようだ。 「ただ、普通の人形師の仕事はしていなかった。その人は『生き返らせることができる人形』を作ろうとしていた。」 「生き返らせる?死体を操ろうっていうのか?」 「いや、そうじゃないよ。」 「それなら、なんだよ?」 「魂を宿らせようとしていたんだ。つまり、死者を復活させる魔法を研究していたのさ。」 「死者を復活?そんなこと、できるの?」 少女の目つきが変わった。 喰らいつくように、復活の話に耳を傾けている。 そういえば、この子の笑顔が消えたのも、初めて見た。 「さあね。できるかどうかなんて、僕にはわからない。でも、その人は熱心に研究していたよ。」 「そんなの、普通はできないんじゃないか?だって、死んでるんだぜ?魔法とか関係なしに、無理なんじゃ……。」 「そうだね。だから、復活の魔法は完成しなかった。」 「復活は、できないんだ……」 少女はがっかりしたようだった。 「じゃあ、どうして、その人は殺されたんだ?」 「わからない。ただ、とても有名な人形師だったみたいだから、人形を盗むためかもね。」 「人形……そういえば、人形って言うけど、あのバケモノはどう見ても人の形なんてしていなかったぞ。」 「普通の人形は、作ってなかったんだ。みんな、変な形をしていたよ。」 「どんな形?」 少女が興味を持ったようだった。 先程の真剣な表情は消えて、何も考えてなさそうな、無邪気な笑顔に戻っていた。 「うーんとね、大きな木みたいなのもいたし、魚っぽいのもいて……」 「えっ、魚のバケモノもいるの?」 「ああ、いたね。あれはすごかったなぁ……」 質問攻めにされている。 楽しく盛り上がっているようだった。 オレを襲ったあのバケモノは、何の形だったんだろう。 少し気になったが、楽しく質問する気には、ならなかった。 それより、重大な事を思い出した。 服を……着替えなければならない。一刻も早く。 あいつらが話に夢中になっている隙に、オレは大昔の……アイドル?の服を、急いで脱ぎ捨てた。 *** ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= *** A-1話「掃除屋」 A-2話「厄介者」 A-3話「人形師」 A-4話「歴史書」
A-1話「掃除屋」
A-2話「厄介者」 A-3話「人形師」 A-4話「歴史書」 *** ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= *** スターテイル A-2話 「厄介者」 *** ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= *** 調査団は、奇妙な事故現場を見て困惑していた。 砂漠の中に、巨大なクレーターができていたのだ。 それも一つではない。大小さまざまな大きさのものがあった。 砂漠は静寂を取り戻していた。 「事故調査などしても、もはや、その教訓を役立てる飛行機が無いのだけど。」 調査団の一人が呟いていた。 「飛行船や気球ならある。調査はきっと無駄にならないよ。」 彼女はそう言って、自分の乗ってきた気球を見つめた。 「無駄ってことにしたいのよ。こんな案件に係わってられないでしょう。」 「先史技術の結晶、無敵の『イエロー・スラッグ』が墜落だなんて、普通の事故じゃない。」 実際、この異常事態には多くの国が動揺していた。 普段は外国の事件など興味も無さそうな国から、様々な理由をつけて調査団が入ってきていた。 「鬱陶しいったらありゃしない。こんなところで仕事なんて気分が暗くなるわ。」 調査団の女性は愚痴をこぼした。 「世界最強の先史遺産様がこんな風に壊れるなんて、有り得ない。ミサイルぶち込んでも平気な顔してるのよ。」 「外部からの攻撃ではないだろう。目撃情報では、戦闘があったという話は全く入っていない。」 「ハイジャック?でも何の声明も入っていない。」 「ブラックボックスの解析が終わるまで、何が起こったのかはわからないでしょうね。」 「解析ねぇ……」 ブラックボックスを回収したのは、一番最初に到着した帝国軍だった。 「まともな復元能力があるとは見えないけど。」 「科学力自体は、申し分ないよ。ただ……」 「隠蔽して改竄、お得意技よね。」 ブラックボックスの中身には期待できないようだった。 だとしたら、手掛かりは、機体だけ……しかし、妙な点がいくつもあった。 「掃除屋が漁った跡があるが、しかし……」 「掃除屋は乗り物を乗り捨てて、どこかへ消えた」 「その通り。そして、これはどう見ても、戦利品だ。」 「えぇ……そうね……。」 「戦闘の痕跡が見当たらないんだよなあ。」 「確かに、これじゃ、突然消えたみたい。」 「それに、あのクレーターは、どう考えても、墜落の後にできたものだ。」 「そんなことわかってるわよ。」 「あのクレーターはどうやってできたんだろう?」 「そんなの知らないわ。大方、積載物か何かが爆発したんでしょ。」 「いや、それは無いだろう。あれだけの規模の爆発物が積んであったなら、機体も損傷しているはずだ。」 「それは、そうだけれど……うーん。」 調査団は頭を悩ませていたが、結局答えが出ないまま解散となった。 しかし、一人の調査員だけが、わずかに残ったタイヤ痕を追跡していた。 *** ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= *** 三人は、砂漠の上を走っていた。 静音の砂上バイクは、定員を超えた荷物を苦にもしていない。 力強く地面を後方に押し流していった。 彼女はこれから、どこに行けばよいのかもわからなかった。 だが、行くあてはあるような気がした。 少女は楽し気に話しかけてくる。 「ねえ!あなたの名前を教えてくれる?」 「名前……。僕は……『フロマージュ』だよ。」 「ふぅ~ん。あなたは魔法使いなの?」 「まあ、そんな感じかな。」 彼女は、自分が厄介者であることを思い出していた。 「君は?」 「私は、『ラジィ』っていうの。私も少し魔法の勉強をしてるんだ。」 「そっか、よろしく!」 (この子と一緒にいれば大丈夫かもしれない) 彼女は、根拠のない安心感に包まれていた。 彼女は、あのバケモノを倒してから、体を動かせるようになった。 バランスをとりながらバイクの後ろに乗り、助けた少年を背負っている。 他にも厄介な荷物をたくさん抱えている……。 この紫の球体は、彼女が管理しなければ危険な存在だった。 (当面の目標は、安全の確保かな……) ついさっき、大きな事件を起こしてしまった。 あの程度で済んだのは、幸運だったのかもしれない。 なにしろ、体が動かなかったのだ。周りに人里が無いのも良かった。 より多くの被害が出ることは容易に想像できる。 「その荷物って、人に見られたら困る物?」 「うん。すごく危ないものなんだ。」 「そうなんだ!すごいね!」 「すごい?」 「さっきみたいに、やっつけてくれるから!」 「そうだね。そのつもりさ。」 ……この少女がいなければ、背中の少年も死んでいた。 (さっきみたいにならなければいいけど……。) 彼女の不安とは裏腹に、砂漠の景色は平和だった。 どこまでも続く砂の大地と、青空。 時々、砂丘に登って休憩する。 彼女は、背中の少年を下ろした。 バイクを調整し、崩れた荷物を整える。 しばらくすると、また背負いなおす。 代わり映えのしない景色の中を、どこまでも進み続けた。 「これからどこに行く?」 「どこか、町があるといいね。その子をなんとかしないと。」 少年は、まだ目を覚まさなかった。 怪我は浅いが、熱が出ているらしい。 「人の多い所は、避けたいな。」 荷物もそうだが……。 背中の少年も、住処であろう掃除屋が消えてしまった。 表社会で暮らせる人間ではなさそうだ。 「そうだね。私も、人の多い所は苦手。」 「荷物を隠せる場所を探そう。」 「顔も、見られたら困る?」 「顔は、大丈夫。名前もね。」 「ふぅん。悪い人じゃないの?」 変な質問だ。こちらも変な質問をしようか。 「君も、僕と同じなのかな。」 「うーん。よくわからないけど、そうなのかも!」 「その箱の中に何が入っているのか、教えてくれないか?」 *** ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= *** 「またいなくなったの?」 「ああ、ちょっと遠くに出かけるとこれだ。」 調査室では、復元作業をしながら調査員が愚痴を溢していた。 「勝手にすぐいなくなるんだよな。」 「あんなんだから、いつまで経っても副室長なんだよ。」 調査員たちは口々に不満を言い合っていた。 しかし、ひとりの調査員は集中して復元作業に当たっていた。 彼は、機体のフレームの調査を担当している。 金属疲労の痕跡を確認するのが主な仕事だが、解析結果が芳しくないのは明らかだった。 予算が無く、碌な装置が無いのだ。 しかし、彼の興味は別の所に向いているようだ。 それは、機体のフレームに付着していた紫色の液体。 他の調査員には見向きもせず、熱心に調べていた。 そして、ついに答えが出たようだった。 「これは……副室長を待ったほうがいいかもしれないな。」 普段なら、判明したことはすぐに報告するのが当たり前である。 しかし、『イエロー・スラッグ』の墜落事故という重要な事件に、この解析結果……。 政治的な判断が必要なのは彼にも理解できた。 その時である。部屋の扉が開かれ、一人の男が入ってきた。 男は部屋を見渡し、ある一点を見て言った。 どうやら、彼を探していたようである。 男の名は、セイファート。 この国で最も権威のある科学者であり、優秀な技術者でもある。 「おや?ここに居たか。」 「はい!何か御用でしょうか?」 「2号機が、壊れていただろう、部品は発注しておいたから。それまでは1台でなんとかしなさい。」 「助かります。ありがとうございます。」 「それで、例の機体についてだが……なにかわかったかね。」 「……ああ、まだ、解析の途中です。」 「どうかしたかね。」 「いえ、特に問題はありません。」 男は、自分の席に戻り書類を確認し始めた。 信用のできない人物。 実力は間違いないが、その功績はほとんど人から奪ったもの。 室長の席が空いているのに副室長が室長にならないのは、この男の妨害によるものだった。 上の命令を聞かずに自由に動き回る副室長は、上層部から心底嫌われていた。 「また、いなくなったのかね?」 見張り、圧力をかけてくる。そのためにここにいるのだ。 副室長への愚痴で盛り上がっていた調査員たちも、それは重々承知していた。 「まだ現場で調査していますよ。」 「他の国の連中もうろついているのに、大変ですよねえ。」 先程の批判の嵐とは一転、徹底して擁護が行われる。 本当は副室長が一番働いていることは、皆よく知っていた。 *** ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= *** 嫌な臭い。だが慣れたものだ。 暗い部屋の中で目を覚ます。 何度味わっても、最悪の目覚めだ。 ここは砂漠の廃墟。 砂に埋もれた町。崩れた建物と瓦礫の山が積み重なる、死の世界。 オレは、ここで暮らすことを強いられている。 いつからだったろうか。 ハエのように群がり、ゴミを集めて売る。 そんな生活をずっと続けていた。 オレたちの通った後にはゴミも何も残らない。砂漠の掃除屋なんて呼ばれていた。 昨日もいつも通り、ゴミ漁りをしていた。 昨日の獲物は大きかった。なんとかって名前のすごい飛行機が、墜落したらしい。 見たこともない機械が沢山転がっていた。きっと大きな稼ぎになる。 現場は悲惨な状態だったが、傷ひとつない奇妙な死体があった。 危ない所には触らないようにして、破片を集めて……。 ……いや、違う。その後、どうなった? 周りを見回す。違う。 ここはオレの家じゃない。 「気が付いたのかい?」 声が聞こえた。その声はオレの記憶になかった。 「あの後ずっと眠っていたんだよ。目が覚めてよかった。」 声の方向に目を向ける。 声の主は、あの奇妙な死体だった。 「お前……生きていたのか。ここはどこだ?」 慌てて立ち上がるが、体が動かない。 見ると、鎖のような物が巻き付いている。 これでは、逃げることはできない。 しかし、今はそれより重要なことがある。 ここはどこなのか。この女が何者なのか。そして、オレは何をされるのか。 不安が全身を支配する。冷や汗が止まらなかった。 「ああ、慌てなくていい。縛っているのは、念のためさ。」 「念のため?」 「君がどんな人なのかわからなかったからね。怖い人かもしれないし。」 「どういうことだ?」 「僕たちは君を助けたんだ。そしてここに連れてきた。君は怪我をしていたからね。」 確かにそうだ。意識を失う前の記憶が蘇ってくる。 突然の出来事だった。あれは……。 そう、バケモノが襲い掛かってきたのだ。 掃除屋の仲間たちはみんな、バケモノに喰われてしまった。 オレも喰われるところだった。 しかし、あの声に助けられ、そして……。 そうだ、バケモノはどこに行った!? あたりを見渡す。誰もいない。 やはり夢でも見ていたのだろうか。 しかし、足の痛みは現実であることを示している。 では、何故、この女は無事なのだろう。 「お前は何者なんだ?」 「僕は……魔法使いさ。あのバケモノには詳しいんだ。」 「魔法?あのバケモノも魔法なのか?」 「まあ、そういうことだね。」 「ここはどこなんだ?」 「さあね。大きな街の、空き家だよ。ここに着いたところで、夜になったんだ。」 「夜……お前は寝ていないのか?」 「交代だよ。この子と一緒に来たんだ。」 彼女の指差した先には、別の少女が眠っていた。 「そいつも、魔法使いなのか?」 「うん、そう言っていたかな。」 どうやら、取って食われるというわけではないらしい。 少年はひとまず安堵した。 「これからオレはどうなるんだ?」 「医者に連れて行こうと思っているよ。」 「医者?オレにそんな金はない。」 医者というのは治療費がかかるはずだ。 とても払える金額ではない。 すると、彼女はこう言った。 ―――お金はいらない。その代わりに僕の言うことをきいてほしい。 *** ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= *** A-1話「掃除屋」 A-2話「厄介者」 A-3話「人形師」 A-4話「歴史書」
A-1話「掃除屋」
A-2話「厄介者」 A-3話「人形師」 *** ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= *** スターテイル A-1話 「掃除屋」 *** ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= *** 地平線まで続く、不毛の砂漠地帯。 普段であれば通り道にも使えない味気ない僻地。 ここに訪れた珍しい客を出迎えるために、鈴生りのハイエナが集まってきた。 「墜落か。」 地上からは砂粒のようにしか見えなかった人類の叡智の結晶。 悪を寄せ付けぬ眼光も、敵を引き裂く爪も、見る影もない。 ただひたすらに沈黙して、色を失った躯を砂上に横たえていた。 「なぜ、落ちたんだろう。事故など起こすとは思えない。」 「攻撃でも、受けたんじゃないか。先史遺産を嫌うものは多いだろう。」 「そんなもの、効かないでしょう。もしそうなら、近くにいた我々も無事では済まない。」 「それもそうだな……」 「とにかく、まずは怪我人の治療だ。」 「ああ。」 彼らは、掃除屋と呼ばれる存在だった。 掃除屋と言っても、掃除や片付けをして、報酬を貰って生活の足しにしているわけではない。 彼らは、「ゴミ」の出現に応じて現れると、それを全て回収し、持ち去ってしまう。 そのまま闇市に売ることもあれば、スクラップにしたり、自らの生活や仕事に使用することもある。 廃品に依存してその日暮しをしている浮浪者集団であった。 まともな教育を受けていない彼らに、怪我人の治療などできるはずもない。 するつもりも毛頭なかった。 治療するなど道徳への言い訳で、金品を漁るだけである。 墜落した飛行機に、生存者など、いない。誰もがそう思っていた。 しかし、ひとりだけ、外傷の無い人間がいたのだ。 「……息はないようだが……」 「一応、布を敷いて、そこに放っておけ。生きているなら起きるだろう。」 「もし起きたら、どうするんですか。」 「どうするもこうするもない。殺すわけにもいくまい。安置した後は、触らないでおけ。」 「わかりました。」 こうして、奇妙な死体がひとつ、砂漠に転がった。 「次は我々の番ですかね。」 「馬鹿を言うなよ。こんなところで死ぬなんて御免だぞ。笑えねえ。」 「何が起きたのかわからんが、さっさと取るもん取って、ここを離れよう。異常事態なんて、碌なもんじゃない。」 まさに異常事態であった。 墜落する飛行機など、ここ100年なかった。 先史文明の滅びるその瞬間に、著名な事件でいくつか落とされて以降、有り得ない事件であった。 そもそも、飛行機というものがこれひとつしかなかった。 その最後のひとつが、今、突然、最期の時を迎えたのだ。 「全部グチャグチャだ。壊れてなければ高価そうなんだがな。」 「部品だけでも相当な値段が付くんじゃないか?」 「俺たちじゃわかんねえよ。小さくて、軽くて、重要そうなところだけ選んで持っていけ。」 「これはどうだ?原型を保ってる。重そうだけど、売れるだろ。」 「それはダメだ。触るな!」 「なんですか急に。」 「燃料タンクかもしれない。墜落したんだ。爆発のひとつやふたつ、するだろう。」 「確かに、燃えたような跡はない。これから燃えるかもしれないな。」 「時間が経ってますよ。もう大丈夫じゃないですか?」 「飛行機の燃料なんて、何の原料を使って飛んでるかわからない。それらしいところには近寄らないでおけ。」 「車の解体なら慣れたもんだが……飛行機の構造など、この星で詳しいやつなんていないだろうな。」 「わかりました。気を付けますよ。」 ゴミ漁り作業は、危険そうな部分を避け、順調に進んでいた。 しかし、毒とも薬とも判別の付かぬ品物があった。 大きな紫色の球体、それも大量の。 いくつかは割れているようだったが、中身は無くなっていた。 「それにしても……こりゃ一体なんだ?妙なものを積んでいるようだ。」 「爆弾とかではないですよね……」 「違うと思うけど、気をつけてくれ。」 「わかってるよ。」 そのとき、地面を揺さぶり、轟音が響いた。 「なんだ?」 「まさか……」 「おい!あれを見ろ!!」 彼らが指差した先には、巨大な影があった。 まるで生き物のように脈動しながら、砂上を這いずっている。 その正体が何なのか、誰も知らなかったが、誰もが理解した。 その影は先ほどの球体と、同じ紫色をしていた。そして、その影は、安全や親しみとはかけ離れた容姿をしていた。 「逃げるんだ!!早くしろ!!!」 誰かの叫び声をきっかけに、彼らは我に返って走り出した。 その背中に、砂上の怪物は、容赦なく襲いかかった。 その日を境に、砂漠の掃除屋たちは姿を消した。 彼らはどこに消えたのか。 誰にもわかるはずがなかった。 彼らは、あの後すぐに、別の世界へと旅立ったのだから。 彼らは、「ゴミ」として、処分されたのだ……。 *** ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= *** 「…………」 意識が戻った時、彼女は暗闇の中にいた。 何も見えない。 ただ、自分が横になっているということだけはわかった。 手足を動かそうとしても、動かない。 声を上げることもできなかった。 (今、僕はどこにいるんだろう。) 微かに音は聞こえてくる。 誰か、会話しているようだ。 (人に見つかったのか?まずい……) 身動きもできない状況では、どうしようもない。 諦めて、相手の出方を伺うことにした。 やがて、ぼんやりと、辺りが見えてきた。 どうやらここは、どこかの砂漠の真ん中のようである。 空には太陽が輝いていて、赤い砂を鋭く照らしていた。 聞こえてくる声の主たちは、忙しく作業を行っているようだった。 (僕のことは見ていないようだ。) 自分が攻撃や拘束を受けているわけではないことを知り、安堵した。 しかし、彼らの運んでいる荷物にはよく見覚えがあった。 紫色の、大きな球体……。 そのうちのいくつかは、割れていた。 それが何を意味するのか、彼女はよく知っていた。 これから何が起こるのかも……。 「これは、なかなかいい値段になりそうだな。」 「ああ。これだけあれば、しばらく遊んで暮らせるぜ。」 「でも、こんなにたくさんあって、どうやって運ぶんですか?」 「運びやすいものだけを選ぶしかない。そろそろ、その作業に入るか。」 「わかりました。」 これから何が起こるのか、知るはずもない。 彼らは彼らの作業を進めていた。 (そんなことをしている場合ではない……) 彼女がそう思った瞬間、目の前が真っ暗になった。 「……!?」 突然の出来事に、混乱する。 轟音とともに、地面から巨大な影が現れた。 「なっ、なんだこいつは!」 「わ、わからない!逃げろ!!」 「ああっ、待ってくれぇー!!」 「助けてくれえ!」 「死にたくないぃ!」 「嫌だぁ!」 「ひいっ!」 「来るな!」 「やめろ!」 「たすけて……」 無数の悲鳴と共に、影は彼らを呑み込んだ。 助けなければ……彼女は、彼らを助けるすべを持っていた。しかし、体は動かなかった。 自分の無力さに絶望した。こんなことが起こるとは、思っていなかった。 人々が犠牲になっていくのを、ただ眺めていることしかできなかった。 その時、彼女の視界の端で、何かが動いたような気がした。 (……?) それはとても弱弱しい印象の少女だった。 だが、少女はバケモノに恐れず、こちらに向かってくる。 「……」 「掴まって!ここから逃げないと。」 少女は彼女を助けに来たようだ。 二輪の乗り物に乗っている。確かに、これなら逃げられそうだ。 「体が動かないんだ。」 彼女はなんとか声を出すことができた。 「じゃあ、ちょっと乱暴だけど、抱えて持っていくね。」 少女はそう言って彼女を担ぎ上げた。 彼女を抱えたまま、少女はバイクに跨り、発進しようとした。 しかし、悲鳴はまだ聞こえてくる。まだ……間に合うかもしれない。 「……僕をあのバケモノの元に運んでくれないか?」 「わかった。」 少女は力強くうなずいた。そして、彼女を優しく抱きかかえた。 その腕はとても温かく感じられた。体温を感じることはできなかったが……少なくとも、そう思った。 「行くよ。」 その言葉と同時に、バイクは走り出した。 凄まじい速さだった。 風を切る音が聞こえる。 景色は飛ぶように過ぎ去っていく。 そして、その先には、巨大な影が待ち構えている。 「どうするつもりなの?」 今更、少女は大事な質問をした。 「あのバケモノに、僕をぶつけてくれ。触れれば倒せる。」 「ぶつける?乱暴にぶつけてもいいのね。」 妙に理解が早い。素直なのか、なんなのか。 彼女がなぜバケモノを倒す力を持っているのか、少女はそんなことは疑問にも思わないようだった。 そこには、砂漠の掃除屋たちがいた。 彼らは必死に逃げようとしていたが、すぐに追いつかれ、飲み込まれてしまった。 「くそぉ!どうしてこうなったんだ!!」 「俺たちが何をしたっていうんだ!!」 彼らは、泣き叫びながら消えていった。 (間に合わなかった……。) 「みんな、死んじゃった……。」 「僕たちも危ないよ。戦うのはやめて、このまま逃げよう。」 「うん……。」 二人は、砂上を這っていたバケモノの目前まで迫ってきていた。 立ち去ろうとした時、砂上に横たわる物体を見つけた。 「あれは、さっきの人たちじゃない?」 「……行こう!」 バイクは再びバケモノの元へ飛んで行った。 今度こそ間に合うはずだ。 「思いっきり投げてくれ!」「わかった!」 少女は、渾身の力を込め、彼女を投げた。 「うおおおーっ!!」 彼女は雄たけびを上げ、砂上の怪物の身体に触れた。 その瞬間、砂上は眩い光に包まれる。 光が収まったとき、そこには何も残されていなかった。 「やった!」 「すごい!あなたって強いんだね!」 少女は嬉しそうな声を上げた。 (これでいい。) 彼女は満足していた。 一人しか助けられなかったが……人を助けたのは、初めてだった。 こうして、砂漠のゴミたちは消えた。 *** ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= *** A-1話「掃除屋」 A-2話「厄介者」 A-3話「人形師」 A-4話「歴史書」 A-5話「町工場」
どんな技でも覚えられるので最強の組み合わせを考える
バグなので対戦での実用性は皆無 バトルタワーなどのNPC戦を想定 BWの技は、スケッチを輸送することでひとつだけ搭載可能 BWまでしか輸送できないので、とくせいカプセルは使用不能 物真似を覚えさせたあとの輸送で特性が目的のものじゃないことがあるのが厳しい 物真似を教えてもらう前にコピーを輸送して、進化させて確認しておく 自力で覚えないBWの技は斜字です ◆全ポケモン共通で強い技 キノコのほうし ◆カイリキー@ノーガード ◆ゴーリキー@ノーガード 確定技:ぜったいれいど 候補技: ばくれつパンチ/インファイト/ばかぢから せいなるほのお/マグマストーム/れんごく/でんじほう ダークホール いえき/スキルスワップ/なかまづくり こうそくいどう/ギアチェンジ コメント: シンプルに最強の組み合わせ 素早さの遅さが難点 世代間での特性変化に注意 ◆パルシェン@スキルリンク 候補技: つららばり/とげキャノン/ミサイルばり/ロックブラスト ボーンラッシュ/タネマシンガン/つっぱり/スイープビンタ からをやぶる/ギアチェンジ/とぐろをまく コメント: 連続技の強さ的にBW確定 元から強いので当然強い 氷+岩が通じない鋼にボーンラッシュ、氷が通じない水にタネマシンガンが強力 世代間での特性変化に注意 ◆ヤドラン@マイペース ◆ヤドキング@マイペース ◆ベロベルト@マイペース ◆ブーピッグ@マイペース ◆パッチール@マイペース 候補技: あばれる/はなびらのまい/げきりん コメント: タイプ一致が暴れるしかない ◆プテラ@いしあたま 確定技: ブレイブバード 候補技: フレアドライブ/ウッドハンマー/すてみタックル/ボルテッカー/もろはのずつき コメント: カイリキーがやられた後に素早さの高さが活きるはず 高い素早さからのキノコのほうしは最悪の強さ 反動技については石頭やマジックガードやすてみのポケモンなら誰でもいい ◆サンダース ◆マルマイン ◆クロバット ◆テッカニン ◆オオスバメ ◆マニューラ コメント: 素早さが高いのでキノコのほうし撃ってるだけで強い 防音マルマインはほろびのうたを一方的に撃てる(悠長) 加速テッカニンはヤバい積み技積んでからバトンの役割もこなせる キノコのほうしで時間稼いでいる間に加速するのはズル ◆ドンメル@たんじゅん 進化できないので特性はどんかん確定。おわり/NHK ◆ハピナス@てんのめぐみ ◆トゲキッス@てんのめぐみ ◆ノコッチ@てんのめぐみ 候補技: ミストボール/ラスターパージ/シードフレア チャージビーム/ほのおのまい せいなるほのお コメント: クソゲー ◆ケッキング@なまけ 確定技:スキルスワップ 候補技: だいばくはつ/しんそく/おきみやげ コメント: デメリットを消しながら起点作りができる バトルタワー連戦ではコンボ色が強く安定しないか ◆ダグトリオ@ありじごく 候補技:ほろびのうた/こころのめ/ぜったいれいど コメント:耐久力無し ◆ダグトリオ@ありじごく 確定技:キノコのほうし/みねうち 候補技:でんじは/へびにらみ/いえき/トリック/みやぶる コメント:逃げるポケモン用の捕獲要員 ◆バタフリー@ふくがん ◆ドクケイル@ふくがん 候補技: ぼうふう/ハイドロポンプ/だいもんじ/かみなり/ふぶき/きあいだま 命中率が低い技 コメント: 元々は眠り粉が売りのポケモンだが、どうせ全員キノコのほうしを使える ◆ヌケニン@ふしぎなまもり 確定技: なかまづくりorなりきり(頑丈) コメント: 無敵 ダブル用 -------------------------------------------------------------------------------------------- ものまねやまねっこを自力・タマゴ技で覚えるポケモン 用意しやすい ◆プクリン 候補技:だいばくはつ/しんそく ◆ピクシー@マジックガード 候補技:反動技 ◆バリヤード@ぼうおん 候補技:ほろびのうた ◆ウソッキー@いしあたま 候補技:反動技 ◆ハピナス ◆エネコロロ ◆プラスル ◆マイナン ◆パッチール ◆ルージュラ ◆ルカリオ ◆エムリット -------------------------------------------------------------------------------------------- -------------------------------------------------------------------------------------------- PT構築例(第4世代) スカーフカイリキー補完型 絶対零度を脳死で撃っていればいいので簡単 ◆カイリキー@ノーガード/陽気/HS252,A4/こだわりスカーフ ぜったいれいど/ばくれつパンチ/せいなるほのお/キノコのほうし ◆プテラ@いしあたま/陽気/H4,AS252/いのちのたま ブレイブバード/ボルテッカー/フレアドライブ/キノコのほうし ◆カビゴン@あついしぼう/いじっぱり/H4,AD252/オボンのみ しんそく/かげうち/マッハパンチ/はらだいこ スカーフカイリキーより素早さが高いのは108族以上 カイリキーの弱点を一致で突けるS108以上のポケモンは以下の12体 ・ドードリオ ・ワタッコ ・オオスバメ ・プテラ ・クロバット ・テッカニン ・エーフィ ・ラティアス ・ラティオス ・スターミー ・アグノム ・フーディン 飛行はプテラで処理する エスパーはカビゴンの起点にする -------------------------------------------------------------------------------------------- PT構築例(第4世代) 高速カイリキー準備型 ◆ケッキング@なまけ/陽気/HS252,D4/きあいのタスキ スキルスワップ/ステルスロック/はたきおとす/おきみやげ ◆テッカニン@かそく/陽気/HS252,B4/たべのこし キノコのほうし/つるぎのまい/みがわり/バトンタッチ ◆カイリキー@ノーガード/陽気/HS252,A4/くろおび ぜったいれいど/ばくれつパンチ/せいなるほのお/こうそくいどう スキルスワップやノーガードが必中:光の粉対応 きあいのタスキ:爪一撃対応 ステルスロック:タスキ対応 はたきおとす・せいなるほのお:ヌケニンに当たる攻撃技 ケッキングで起点を作り、テッカニンで積み、カイリキーで〆る構築 ふしぎなまもり、まもる状態、そらをとぶ状態などの相手にはスキルスワップは失敗する マジックガードの相手にはステルスロックのダメージはない なまけにした相手が置き土産、自爆、大爆発、呪い、滅びの歌で自滅すると崩壊 つるぎのまいはビルドアップやとぐろをまくでもいい -------------------------------------------------------------------------------------------- |
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プロフィール
HN:
装甲兵
年齢:
32
HP:
性別:
男性
誕生日:
1992/04/25
職業:
妖精
趣味:
遊戯王・ポケモン
自己紹介:
マイナーポケモンネタデッキが好き
弱いからではなく、強いから好き
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