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A-1話「掃除屋」
A-2話「厄介者」
A-3話「人形師」

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スターテイル A-1話 「掃除屋」

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地平線まで続く、不毛の砂漠地帯。
普段であれば通り道にも使えない味気ない僻地。
ここに訪れた珍しい客を出迎えるために、鈴生りのハイエナが集まってきた。

「墜落か。」

地上からは砂粒のようにしか見えなかった人類の叡智の結晶。
悪を寄せ付けぬ眼光も、敵を引き裂く爪も、見る影もない。
ただひたすらに沈黙して、色を失った躯を砂上に横たえていた。

「なぜ、落ちたんだろう。事故など起こすとは思えない。」
「攻撃でも、受けたんじゃないか。先史遺産を嫌うものは多いだろう。」
「そんなもの、効かないでしょう。もしそうなら、近くにいた我々も無事では済まない。」
「それもそうだな……」
「とにかく、まずは怪我人の治療だ。」
「ああ。」

彼らは、掃除屋と呼ばれる存在だった。
掃除屋と言っても、掃除や片付けをして、報酬を貰って生活の足しにしているわけではない。
彼らは、「ゴミ」の出現に応じて現れると、それを全て回収し、持ち去ってしまう。
そのまま闇市に売ることもあれば、スクラップにしたり、自らの生活や仕事に使用することもある。
廃品に依存してその日暮しをしている浮浪者集団であった。



まともな教育を受けていない彼らに、怪我人の治療などできるはずもない。
するつもりも毛頭なかった。
治療するなど道徳への言い訳で、金品を漁るだけである。
墜落した飛行機に、生存者など、いない。誰もがそう思っていた。

しかし、ひとりだけ、外傷の無い人間がいたのだ。
「……息はないようだが……」
「一応、布を敷いて、そこに放っておけ。生きているなら起きるだろう。」
「もし起きたら、どうするんですか。」
「どうするもこうするもない。殺すわけにもいくまい。安置した後は、触らないでおけ。」
「わかりました。」
こうして、奇妙な死体がひとつ、砂漠に転がった。

「次は我々の番ですかね。」
「馬鹿を言うなよ。こんなところで死ぬなんて御免だぞ。笑えねえ。」
「何が起きたのかわからんが、さっさと取るもん取って、ここを離れよう。異常事態なんて、碌なもんじゃない。」
まさに異常事態であった。
墜落する飛行機など、ここ100年なかった。
先史文明の滅びるその瞬間に、著名な事件でいくつか落とされて以降、有り得ない事件であった。
そもそも、飛行機というものがこれひとつしかなかった。
その最後のひとつが、今、突然、最期の時を迎えたのだ。

「全部グチャグチャだ。壊れてなければ高価そうなんだがな。」
「部品だけでも相当な値段が付くんじゃないか?」
「俺たちじゃわかんねえよ。小さくて、軽くて、重要そうなところだけ選んで持っていけ。」
「これはどうだ?原型を保ってる。重そうだけど、売れるだろ。」
「それはダメだ。触るな!」
「なんですか急に。」
「燃料タンクかもしれない。墜落したんだ。爆発のひとつやふたつ、するだろう。」
「確かに、燃えたような跡はない。これから燃えるかもしれないな。」
「時間が経ってますよ。もう大丈夫じゃないですか?」
「飛行機の燃料なんて、何の原料を使って飛んでるかわからない。それらしいところには近寄らないでおけ。」
「車の解体なら慣れたもんだが……飛行機の構造など、この星で詳しいやつなんていないだろうな。」
「わかりました。気を付けますよ。」
ゴミ漁り作業は、危険そうな部分を避け、順調に進んでいた。

しかし、毒とも薬とも判別の付かぬ品物があった。
大きな紫色の球体、それも大量の。
いくつかは割れているようだったが、中身は無くなっていた。
「それにしても……こりゃ一体なんだ?妙なものを積んでいるようだ。」
「爆弾とかではないですよね……」
「違うと思うけど、気をつけてくれ。」
「わかってるよ。」
そのとき、地面を揺さぶり、轟音が響いた。
「なんだ?」
「まさか……」
「おい!あれを見ろ!!」

彼らが指差した先には、巨大な影があった。
まるで生き物のように脈動しながら、砂上を這いずっている。
その正体が何なのか、誰も知らなかったが、誰もが理解した。
その影は先ほどの球体と、同じ紫色をしていた。そして、その影は、安全や親しみとはかけ離れた容姿をしていた。
「逃げるんだ!!早くしろ!!!」



誰かの叫び声をきっかけに、彼らは我に返って走り出した。
その背中に、砂上の怪物は、容赦なく襲いかかった。
その日を境に、砂漠の掃除屋たちは姿を消した。
彼らはどこに消えたのか。
誰にもわかるはずがなかった。
彼らは、あの後すぐに、別の世界へと旅立ったのだから。
彼らは、「ゴミ」として、処分されたのだ……。

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「…………」
意識が戻った時、彼女は暗闇の中にいた。
何も見えない。
ただ、自分が横になっているということだけはわかった。
手足を動かそうとしても、動かない。
声を上げることもできなかった。
(今、僕はどこにいるんだろう。)

微かに音は聞こえてくる。
誰か、会話しているようだ。
(人に見つかったのか?まずい……)
身動きもできない状況では、どうしようもない。
諦めて、相手の出方を伺うことにした。

やがて、ぼんやりと、辺りが見えてきた。
どうやらここは、どこかの砂漠の真ん中のようである。
空には太陽が輝いていて、赤い砂を鋭く照らしていた。
聞こえてくる声の主たちは、忙しく作業を行っているようだった。
(僕のことは見ていないようだ。)
自分が攻撃や拘束を受けているわけではないことを知り、安堵した。

しかし、彼らの運んでいる荷物にはよく見覚えがあった。
紫色の、大きな球体……。
そのうちのいくつかは、割れていた。
それが何を意味するのか、彼女はよく知っていた。
これから何が起こるのかも……。

「これは、なかなかいい値段になりそうだな。」
「ああ。これだけあれば、しばらく遊んで暮らせるぜ。」
「でも、こんなにたくさんあって、どうやって運ぶんですか?」
「運びやすいものだけを選ぶしかない。そろそろ、その作業に入るか。」
「わかりました。」
これから何が起こるのか、知るはずもない。
彼らは彼らの作業を進めていた。
(そんなことをしている場合ではない……)

彼女がそう思った瞬間、目の前が真っ暗になった。
「……!?」
突然の出来事に、混乱する。
轟音とともに、地面から巨大な影が現れた。
「なっ、なんだこいつは!」
「わ、わからない!逃げろ!!」
「ああっ、待ってくれぇー!!」
「助けてくれえ!」
「死にたくないぃ!」
「嫌だぁ!」
「ひいっ!」
「来るな!」
「やめろ!」
「たすけて……」
無数の悲鳴と共に、影は彼らを呑み込んだ。

助けなければ……彼女は、彼らを助けるすべを持っていた。しかし、体は動かなかった。
自分の無力さに絶望した。こんなことが起こるとは、思っていなかった。
人々が犠牲になっていくのを、ただ眺めていることしかできなかった。

その時、彼女の視界の端で、何かが動いたような気がした。
(……?)
それはとても弱弱しい印象の少女だった。
だが、少女はバケモノに恐れず、こちらに向かってくる。
「……」

「掴まって!ここから逃げないと。」
少女は彼女を助けに来たようだ。
二輪の乗り物に乗っている。確かに、これなら逃げられそうだ。
「体が動かないんだ。」
彼女はなんとか声を出すことができた。

「じゃあ、ちょっと乱暴だけど、抱えて持っていくね。」
少女はそう言って彼女を担ぎ上げた。
彼女を抱えたまま、少女はバイクに跨り、発進しようとした。
しかし、悲鳴はまだ聞こえてくる。まだ……間に合うかもしれない。
「……僕をあのバケモノの元に運んでくれないか?」
「わかった。」
少女は力強くうなずいた。そして、彼女を優しく抱きかかえた。
その腕はとても温かく感じられた。体温を感じることはできなかったが……少なくとも、そう思った。

「行くよ。」
その言葉と同時に、バイクは走り出した。
凄まじい速さだった。
風を切る音が聞こえる。
景色は飛ぶように過ぎ去っていく。

そして、その先には、巨大な影が待ち構えている。
「どうするつもりなの?」
今更、少女は大事な質問をした。
「あのバケモノに、僕をぶつけてくれ。触れれば倒せる。」
「ぶつける?乱暴にぶつけてもいいのね。」
妙に理解が早い。素直なのか、なんなのか。
彼女がなぜバケモノを倒す力を持っているのか、少女はそんなことは疑問にも思わないようだった。

そこには、砂漠の掃除屋たちがいた。
彼らは必死に逃げようとしていたが、すぐに追いつかれ、飲み込まれてしまった。
「くそぉ!どうしてこうなったんだ!!」
「俺たちが何をしたっていうんだ!!」
彼らは、泣き叫びながら消えていった。

(間に合わなかった……。)
「みんな、死んじゃった……。」
「僕たちも危ないよ。戦うのはやめて、このまま逃げよう。」

「うん……。」
二人は、砂上を這っていたバケモノの目前まで迫ってきていた。
立ち去ろうとした時、砂上に横たわる物体を見つけた。
「あれは、さっきの人たちじゃない?」
「……行こう!」
バイクは再びバケモノの元へ飛んで行った。
今度こそ間に合うはずだ。

「思いっきり投げてくれ!」「わかった!」
少女は、渾身の力を込め、彼女を投げた。
「うおおおーっ!!」
彼女は雄たけびを上げ、砂上の怪物の身体に触れた。
その瞬間、砂上は眩い光に包まれる。



光が収まったとき、そこには何も残されていなかった。
「やった!」
「すごい!あなたって強いんだね!」
少女は嬉しそうな声を上げた。
(これでいい。)
彼女は満足していた。
一人しか助けられなかったが……人を助けたのは、初めてだった。

こうして、砂漠のゴミたちは消えた。

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A-5話「町工場」
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装甲兵
年齢:
32
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性別:
男性
誕生日:
1992/04/25
職業:
妖精
趣味:
遊戯王・ポケモン
自己紹介:
マイナーポケモンネタデッキが好き
弱いからではなく、強いから好き

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