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A-1話「掃除屋」
A-2話「厄介者」
A-3話「人形師」
A-4話「歴史書」

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スターテイル A-2話 「厄介者」

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調査団は、奇妙な事故現場を見て困惑していた。
砂漠の中に、巨大なクレーターができていたのだ。
それも一つではない。大小さまざまな大きさのものがあった。
砂漠は静寂を取り戻していた。

「事故調査などしても、もはや、その教訓を役立てる飛行機が無いのだけど。」
調査団の一人が呟いていた。
「飛行船や気球ならある。調査はきっと無駄にならないよ。」
彼女はそう言って、自分の乗ってきた気球を見つめた。
「無駄ってことにしたいのよ。こんな案件に係わってられないでしょう。」
「先史技術の結晶、無敵の『イエロー・スラッグ』が墜落だなんて、普通の事故じゃない。」

実際、この異常事態には多くの国が動揺していた。
普段は外国の事件など興味も無さそうな国から、様々な理由をつけて調査団が入ってきていた。
「鬱陶しいったらありゃしない。こんなところで仕事なんて気分が暗くなるわ。」
調査団の女性は愚痴をこぼした。

「世界最強の先史遺産様がこんな風に壊れるなんて、有り得ない。ミサイルぶち込んでも平気な顔してるのよ。」
「外部からの攻撃ではないだろう。目撃情報では、戦闘があったという話は全く入っていない。」
「ハイジャック?でも何の声明も入っていない。」
「ブラックボックスの解析が終わるまで、何が起こったのかはわからないでしょうね。」
「解析ねぇ……」
ブラックボックスを回収したのは、一番最初に到着した帝国軍だった。
「まともな復元能力があるとは見えないけど。」
「科学力自体は、申し分ないよ。ただ……」
「隠蔽して改竄、お得意技よね。」
ブラックボックスの中身には期待できないようだった。

だとしたら、手掛かりは、機体だけ……しかし、妙な点がいくつもあった。
「掃除屋が漁った跡があるが、しかし……」
「掃除屋は乗り物を乗り捨てて、どこかへ消えた」
「その通り。そして、これはどう見ても、戦利品だ。」
「えぇ……そうね……。」
「戦闘の痕跡が見当たらないんだよなあ。」
「確かに、これじゃ、突然消えたみたい。」
「それに、あのクレーターは、どう考えても、墜落の後にできたものだ。」
「そんなことわかってるわよ。」
「あのクレーターはどうやってできたんだろう?」
「そんなの知らないわ。大方、積載物か何かが爆発したんでしょ。」
「いや、それは無いだろう。あれだけの規模の爆発物が積んであったなら、機体も損傷しているはずだ。」
「それは、そうだけれど……うーん。」
調査団は頭を悩ませていたが、結局答えが出ないまま解散となった。

しかし、一人の調査員だけが、わずかに残ったタイヤ痕を追跡していた。



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三人は、砂漠の上を走っていた。
静音の砂上バイクは、定員を超えた荷物を苦にもしていない。
力強く地面を後方に押し流していった。

彼女はこれから、どこに行けばよいのかもわからなかった。
だが、行くあてはあるような気がした。
少女は楽し気に話しかけてくる。

「ねえ!あなたの名前を教えてくれる?」
「名前……。僕は……『フロマージュ』だよ。」
「ふぅ~ん。あなたは魔法使いなの?」
「まあ、そんな感じかな。」
彼女は、自分が厄介者であることを思い出していた。
「君は?」
「私は、『ラジィ』っていうの。私も少し魔法の勉強をしてるんだ。」
「そっか、よろしく!」
(この子と一緒にいれば大丈夫かもしれない)
彼女は、根拠のない安心感に包まれていた。

彼女は、あのバケモノを倒してから、体を動かせるようになった。
バランスをとりながらバイクの後ろに乗り、助けた少年を背負っている。
他にも厄介な荷物をたくさん抱えている……。
この紫の球体は、彼女が管理しなければ危険な存在だった。

(当面の目標は、安全の確保かな……)
ついさっき、大きな事件を起こしてしまった。
あの程度で済んだのは、幸運だったのかもしれない。
なにしろ、体が動かなかったのだ。周りに人里が無いのも良かった。
より多くの被害が出ることは容易に想像できる。



「その荷物って、人に見られたら困る物?」
「うん。すごく危ないものなんだ。」
「そうなんだ!すごいね!」
「すごい?」
「さっきみたいに、やっつけてくれるから!」
「そうだね。そのつもりさ。」
……この少女がいなければ、背中の少年も死んでいた。
(さっきみたいにならなければいいけど……。)

彼女の不安とは裏腹に、砂漠の景色は平和だった。
どこまでも続く砂の大地と、青空。
時々、砂丘に登って休憩する。
彼女は、背中の少年を下ろした。
バイクを調整し、崩れた荷物を整える。
しばらくすると、また背負いなおす。
代わり映えのしない景色の中を、どこまでも進み続けた。

「これからどこに行く?」
「どこか、町があるといいね。その子をなんとかしないと。」
少年は、まだ目を覚まさなかった。
怪我は浅いが、熱が出ているらしい。
「人の多い所は、避けたいな。」
荷物もそうだが……。
背中の少年も、住処であろう掃除屋が消えてしまった。
表社会で暮らせる人間ではなさそうだ。

「そうだね。私も、人の多い所は苦手。」
「荷物を隠せる場所を探そう。」
「顔も、見られたら困る?」
「顔は、大丈夫。名前もね。」
「ふぅん。悪い人じゃないの?」
変な質問だ。こちらも変な質問をしようか。
「君も、僕と同じなのかな。」
「うーん。よくわからないけど、そうなのかも!」
「その箱の中に何が入っているのか、教えてくれないか?」

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「またいなくなったの?」
「ああ、ちょっと遠くに出かけるとこれだ。」
調査室では、復元作業をしながら調査員が愚痴を溢していた。
「勝手にすぐいなくなるんだよな。」
「あんなんだから、いつまで経っても副室長なんだよ。」
調査員たちは口々に不満を言い合っていた。

しかし、ひとりの調査員は集中して復元作業に当たっていた。
彼は、機体のフレームの調査を担当している。
金属疲労の痕跡を確認するのが主な仕事だが、解析結果が芳しくないのは明らかだった。
予算が無く、碌な装置が無いのだ。
しかし、彼の興味は別の所に向いているようだ。
それは、機体のフレームに付着していた紫色の液体。
他の調査員には見向きもせず、熱心に調べていた。
そして、ついに答えが出たようだった。

「これは……副室長を待ったほうがいいかもしれないな。」
普段なら、判明したことはすぐに報告するのが当たり前である。
しかし、『イエロー・スラッグ』の墜落事故という重要な事件に、この解析結果……。
政治的な判断が必要なのは彼にも理解できた。

その時である。部屋の扉が開かれ、一人の男が入ってきた。
男は部屋を見渡し、ある一点を見て言った。
どうやら、彼を探していたようである。
男の名は、セイファート。
この国で最も権威のある科学者であり、優秀な技術者でもある。

「おや?ここに居たか。」
「はい!何か御用でしょうか?」
「2号機が、壊れていただろう、部品は発注しておいたから。それまでは1台でなんとかしなさい。」
「助かります。ありがとうございます。」
「それで、例の機体についてだが……なにかわかったかね。」
「……ああ、まだ、解析の途中です。」
「どうかしたかね。」
「いえ、特に問題はありません。」
男は、自分の席に戻り書類を確認し始めた。

信用のできない人物。
実力は間違いないが、その功績はほとんど人から奪ったもの。
室長の席が空いているのに副室長が室長にならないのは、この男の妨害によるものだった。
上の命令を聞かずに自由に動き回る副室長は、上層部から心底嫌われていた。

「また、いなくなったのかね?」
見張り、圧力をかけてくる。そのためにここにいるのだ。
副室長への愚痴で盛り上がっていた調査員たちも、それは重々承知していた。
「まだ現場で調査していますよ。」
「他の国の連中もうろついているのに、大変ですよねえ。」
先程の批判の嵐とは一転、徹底して擁護が行われる。
本当は副室長が一番働いていることは、皆よく知っていた。

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嫌な臭い。だが慣れたものだ。
暗い部屋の中で目を覚ます。
何度味わっても、最悪の目覚めだ。
ここは砂漠の廃墟。
砂に埋もれた町。崩れた建物と瓦礫の山が積み重なる、死の世界。

オレは、ここで暮らすことを強いられている。
いつからだったろうか。
ハエのように群がり、ゴミを集めて売る。
そんな生活をずっと続けていた。
オレたちの通った後にはゴミも何も残らない。砂漠の掃除屋なんて呼ばれていた。

昨日もいつも通り、ゴミ漁りをしていた。
昨日の獲物は大きかった。なんとかって名前のすごい飛行機が、墜落したらしい。
見たこともない機械が沢山転がっていた。きっと大きな稼ぎになる。
現場は悲惨な状態だったが、傷ひとつない奇妙な死体があった。
危ない所には触らないようにして、破片を集めて……。
……いや、違う。その後、どうなった?



周りを見回す。違う。
ここはオレの家じゃない。

「気が付いたのかい?」
声が聞こえた。その声はオレの記憶になかった。
「あの後ずっと眠っていたんだよ。目が覚めてよかった。」
声の方向に目を向ける。
声の主は、あの奇妙な死体だった。

「お前……生きていたのか。ここはどこだ?」
慌てて立ち上がるが、体が動かない。
見ると、鎖のような物が巻き付いている。
これでは、逃げることはできない。
しかし、今はそれより重要なことがある。
ここはどこなのか。この女が何者なのか。そして、オレは何をされるのか。
不安が全身を支配する。冷や汗が止まらなかった。

「ああ、慌てなくていい。縛っているのは、念のためさ。」
「念のため?」
「君がどんな人なのかわからなかったからね。怖い人かもしれないし。」
「どういうことだ?」
「僕たちは君を助けたんだ。そしてここに連れてきた。君は怪我をしていたからね。」

確かにそうだ。意識を失う前の記憶が蘇ってくる。
突然の出来事だった。あれは……。
そう、バケモノが襲い掛かってきたのだ。
掃除屋の仲間たちはみんな、バケモノに喰われてしまった。
オレも喰われるところだった。
しかし、あの声に助けられ、そして……。
そうだ、バケモノはどこに行った!? あたりを見渡す。誰もいない。
やはり夢でも見ていたのだろうか。
しかし、足の痛みは現実であることを示している。
では、何故、この女は無事なのだろう。

「お前は何者なんだ?」
「僕は……魔法使いさ。あのバケモノには詳しいんだ。」
「魔法?あのバケモノも魔法なのか?」
「まあ、そういうことだね。」
「ここはどこなんだ?」
「さあね。大きな街の、空き家だよ。ここに着いたところで、夜になったんだ。」
「夜……お前は寝ていないのか?」
「交代だよ。この子と一緒に来たんだ。」
彼女の指差した先には、別の少女が眠っていた。
「そいつも、魔法使いなのか?」
「うん、そう言っていたかな。」

どうやら、取って食われるというわけではないらしい。
少年はひとまず安堵した。

「これからオレはどうなるんだ?」
「医者に連れて行こうと思っているよ。」
「医者?オレにそんな金はない。」
医者というのは治療費がかかるはずだ。
とても払える金額ではない。

すると、彼女はこう言った。
―――お金はいらない。その代わりに僕の言うことをきいてほしい。

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プロフィール
HN:
装甲兵
年齢:
32
HP:
性別:
男性
誕生日:
1992/04/25
職業:
妖精
趣味:
遊戯王・ポケモン
自己紹介:
マイナーポケモンネタデッキが好き
弱いからではなく、強いから好き

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