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A-1話「掃除屋」
A-2話「厄介者」
A-3話「人形師」
A-4話「歴史書」

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スターテイル A-3話 「人形師」

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赤く輝く地平線。
鋭く照りつける太陽と裏腹に、風は冷たくなっていた。
雲ひとつない空に、星々が輝き始める。
前方のタイヤの跡を辿り、自らの足跡とともに後方の痕跡を消していく。
光が影と変わる中、ひとりの調査員はゆっくりと歩みを進めていた。
彼女の名は『ミュース』。
この国の捜査機関、災害事故調査室。その副室長を務めていた。

しかし今はその肩書きとは関係なく、彼女はただの興味本位で動いている。
彼女は優秀な調査官であり、優れた洞察力を持っていた。
その能力を、椅子に座っているだけのお偉方のために使うつもりはなかった。
それに、彼女には彼女の目的がある。
調査員という仕事は、そのために都合が良かった。
副室長から昇進できないのは、妨害されていることもあるが……。
彼女自身、それほど高い地位に就くことを求めていなかった。
あまり責任の重い役職では、自由に動けない。
権力が必要になる時期もいつか来るとは考えていたが、まだその必要はなかった。

「そろそろ、大丈夫かしら。」
歩いてきた道を振り返る。
尾行は無いようだが……それよりは、偶然に目撃されることが厄介だ。
神経を集中し、注意深く辺りを見回した。
広大な闇の中で、わずかな星の灯りが景色を浮かびあげる。
時の止まったように動かない黒い世界。
宇宙に鏤められた色とりどりの星だけが、静かに廻っていた。

誰もいない。虫一匹の気配も感じられない。
透き通った青い眼が前方を見据える。
突然、大きく、大きく砂煙が上がると……。
彼女は、忽然と姿を消していた。

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「この服、似合うんじゃない?ほらほら、着替えてみて!」
「いや、それは、女の子の服なんじゃ……」
「いいんじゃないかな?男が女の服を着ても。」
「断固拒否する。」
「抵抗しても無駄だよ。」
「脱げー!」
「ぐえっ……」

いったい、なにをしているんだろうか……。
オレは、街の服屋で着せ替え人形になっていた。
結局、あれからの数日間、こいつらと行動を共にしている。
宿屋を見つけたり、医者に行ったり、飯を確保したり……。
そして今、服を買いに来ている。
全員、服がボロボロだったからだ。

「怪我はもう大丈夫?」
「ああ、おかげさまで。」
「そっか。それなら、よかった。」
そう言って、少女は微笑む。
その顔に少しドキッとしたが、すぐに我に返った。

「お前はどうしてこんなところにいるんだ?旅をしてるのはわかるけど……。」
「私は、世界を救いたいの。」
「どういうことだ?」
「バケモノに襲われて、死ぬかもしれない。そんな状況になったとき、君も私と同じことを思ったでしょう?『死にたくない』って。」
オレは黙ってうなずいた。
「みんなそうなんだよ。だから、魔法の勉強を始めたんだ。」
「自分の命は自分で守るってことか?」
「自分だけじゃないよ、みんなも!」
「ふぅん……」

この少女の言っていることはわかった。
しかし、わからないことがある。
ずっと気になっていた。もう一人のほうだ。
「お前もそうなのか?」
「そうさ。」
「でも、お前からは魔力を感じないぞ?」

彼女は少し驚いたようだった。
オレは勉強なんて何もしてないし、魔法も使えない。
だが、生まれつき、なんとなく魔力を感じることはできた。
彼女は少し遠くを見ながら、答えた。
「僕には魔法の才能が無いんだ。」
「え?あんなに強いのに!」
少女も目を丸くして驚いていた。
「だったら、どうやってあのバケモノを倒したんだ?」
「ううん、それはね……」
返答に困っているようだった。

俺が目を覚まし、初めて見たときから、彼女は常に余裕をもって堂々と話していた。
いつも薄く浮かべていた笑みが、今は失われていた。
「……そうだね。話しておかないと。」
彼女はそう言うと、椅子に腰掛け、真剣な表情になった。
「実はね、僕もわからないんだ。」

「はぁ!?わかんねぇのかよ!」
「まあ、落ち着いて聞いてほしい。」
落ち着けるか!と言いたかったが、我慢した。
彼女が冗談を言っていないことは明らかだ。

「僕は、あのバケモノを作り出した人を知っている。」
「作った人?」
「その人が、倒し方を知っていたんだ。」
「仕組みはわからないけど、倒し方だけ、教えてもらったってことか?」
「そういうことになるかな。」
「じゃあ、その人がバケモノを作って、世の中にバラまいてるのか?」
「違うんだ。」
「作った人なんだろ?だったらそうじゃないか。何が違うんだ?」

別にそんなに、好きな連中ではなかったけど。
一応、一緒に時間を過ごしてきた仲間だとは思っていた。
オレの仲間たちが殺されたんだ。そして、オレも死ぬところだった。
その犯人だ。オレは少し声を荒げた。

「そいつをブッ倒しに行く!どこにいるか教えろ!」
「それは、無理だ。」
「無理じゃないだろ。お前が教えてくれればいいだけだ。なんで隠すんだ?」
「ちょっと、落ち着いて!」
少女が体を押さえてくる。
「わかった、教えるよ。別に、隠してるわけじゃない。」
「早く教えろ!」

「死んだんだよ。」
「え?」
「殺されたんだ。僕の目の前でね。」
「……?」
「そして、みんな奪われていった。」
「みんな?」
「バケモノだよ。大人しい、良い子たちだったんだ。元々はね。」
「どういうことだ?」
「魔法で作り出された、働き者の使い魔だったんだ。その人は、『人形師』として、有名だったのさ。」

人形師。
魔法を使った職業のひとつだ。
人の代わりに働く魔法のロボットを作るのが、人形師の仕事だ。
ただ、彼女の言うその人は、少し違ったようだ。

「ただ、普通の人形師の仕事はしていなかった。その人は『生き返らせることができる人形』を作ろうとしていた。」
「生き返らせる?死体を操ろうっていうのか?」
「いや、そうじゃないよ。」
「それなら、なんだよ?」
「魂を宿らせようとしていたんだ。つまり、死者を復活させる魔法を研究していたのさ。」

「死者を復活?そんなこと、できるの?」
少女の目つきが変わった。
喰らいつくように、復活の話に耳を傾けている。
そういえば、この子の笑顔が消えたのも、初めて見た。
「さあね。できるかどうかなんて、僕にはわからない。でも、その人は熱心に研究していたよ。」
「そんなの、普通はできないんじゃないか?だって、死んでるんだぜ?魔法とか関係なしに、無理なんじゃ……。」
「そうだね。だから、復活の魔法は完成しなかった。」
「復活は、できないんだ……」
少女はがっかりしたようだった。

「じゃあ、どうして、その人は殺されたんだ?」
「わからない。ただ、とても有名な人形師だったみたいだから、人形を盗むためかもね。」
「人形……そういえば、人形って言うけど、あのバケモノはどう見ても人の形なんてしていなかったぞ。」
「普通の人形は、作ってなかったんだ。みんな、変な形をしていたよ。」



「どんな形?」
少女が興味を持ったようだった。
先程の真剣な表情は消えて、何も考えてなさそうな、無邪気な笑顔に戻っていた。
「うーんとね、大きな木みたいなのもいたし、魚っぽいのもいて……」
「えっ、魚のバケモノもいるの?」
「ああ、いたね。あれはすごかったなぁ……」
質問攻めにされている。
楽しく盛り上がっているようだった。
オレを襲ったあのバケモノは、何の形だったんだろう。
少し気になったが、楽しく質問する気には、ならなかった。
それより、重大な事を思い出した。
服を……着替えなければならない。一刻も早く。
あいつらが話に夢中になっている隙に、オレは大昔の……アイドル?の服を、急いで脱ぎ捨てた。

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プロフィール
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装甲兵
年齢:
32
HP:
性別:
男性
誕生日:
1992/04/25
職業:
妖精
趣味:
遊戯王・ポケモン
自己紹介:
マイナーポケモンネタデッキが好き
弱いからではなく、強いから好き

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