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A-1話「掃除屋」
A-2話「厄介者」
A-3話「人形師」
A-4話「歴史書」
A-5話「町工場」

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スターテイル A-4話 「歴史書」

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忙しそうに歩き回る者。苦しそうに眉を顰めて書類を見つめる者。
装置の作動音と、ペンを走らせる音だけが静かに響いている。
「いったいどこに行ったんだ?もう、何日も戻ってこないじゃないか。」
男は不機嫌そうに、ここにいない人間の文句を言う。
男の名はセイファート。
この国で最も権威のある科学者であり、優秀な技術者でもある。

この男は今日も、特に用事もないのに、調査室に文句をつけるために来ている。
いつも不機嫌そうな顔をしているが、内心、不祥事のネタが手に入ることを喜んでいる。
調査員たちは皆、そのことをよく知っていた。
「副室長ですか?会議とか、言っていたような……」
「さっき、そこにいませんでした?」
調査員は皆、適当な言い訳で済ませている。
副室長はいつも勝手にいなくなる。もう慣れたものだった。

しかし、今回は違う。今までとは違うのだ。
「本当に、どこへ行ったんだ?」
この男が、こんなに副室長を探しているのには、いつもとは別の理由がある。

実は、数日前、とんでもない事件があった。
『生きる歴史書』と呼ばれる天才考古学者が殺され、大量の先史遺産が奪われたのだ。
この事件で帝国軍は大混乱に陥り、戒厳令が出た。
先史人類による超科学。先史遺産は危険な存在であり、厳重な警備が敷かれていた。
それが破られたのだ。警備を怠っていたわけではなかった。
部屋から出てこないのを不審に思った召使いが、部屋の鍵を開け、発覚した。
その時、考古学者は既に、焼け焦げた死体となっていた。

墜落した『イエロー・スラッグ』の調査も重要だ。
だが、『生きる歴史書』の事件のほうが、事態は差し迫っていた。
あの量の先史遺産があれば、小さな国ひとつ滅ぼすことなど、訳はない。
考古学者が研究していたそれらの先史遺産は、武器や兵器ではなかった。
一般の家庭で使うような農機具や、スポーツ用品の類だ。
しかし、この時代の人類の技術からすれば、その性能は真に恐るべきものだった。
エネルギー出力も、耐久力も、まるで格が違う。
顧客に配慮された設計のため、使用者の身の安全は保障されている。
現代の武器では、いくら攻撃しても、使用者に汚れひとつ付けることもできないのだ。
先史遺産には、先史遺産でしか対抗できなかった。

「まさか、王国が戦争を仕掛けてくるなんてことは、ないだろうな……」
セイファートは不安そうに呟く。
広大な海を支配する、海の王国『クロアキナ』。
帝国と王国は、直接の戦闘はなかったものの、昔からずっと、いがみ合っていた。
王国は、最近やけにおとなしかった。
先史遺産を奪う好機を窺っていたのでは……。
男は、自分の席に戻り書類を確認し始めた。



仕事のできない人物。
実力は間違いないが、その功績はほとんど人から奪ったもの。
副室長が室長にならないのにこの男が室長の座に就かないのは、この男が要職に向かないからだった。
上の命令通りに従順に動いているだけのセイファートは、上層部からも信用されていなかった。

立て続けに起こる異常事態への対応は、この男では全く手に余った。
今回は本当に、ほとほと困っていた。
助けてくれ、副室長……。
頼む!早く帰ってきてくれ!
セイファートは、溜まった書類を特に処理するでもなく、ただ天に祈っていた。

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まだ太陽が昇っていない薄暗い空が、わずかに青い輝きを取り戻していく。
ここは宿屋の一室。オレは、ベッドの上で目を覚ました。
昨日は街を歩き回り、ずっと荷物持ちをさせられていた。
あの後、オレは疲れて眠ってしまったようだ。
服は、元通り着せ替えられていた。
寝ている間、ずっと変な格好をさせられているのは、流石に不憫だと思ってくれたのか。
街を歩いている間は、ふざけた格好を晒し者にされていたわけだが……。

散々玩具にはされていたが、悪い気はしなかった。
怒鳴られたり殴られたりしない。
憲兵や他の掃除屋から追いかけられたりもしない。
ゴミを漁ったりドブに潜ったりしなくていい。
平和な時間を過ごすのは初めてだった。
いつでも逃げる機会はあった気がするが、逃げようとは思わなかった。
こうやって安らかな時間を過ごすのが、本来の人間の生活なんだと感じた。

しかし、そんな甘い考えをしている自分が、嫌だった。
人間なんて、自分のために人を傷つけるし、簡単に裏切るものだ。
オレだって、今までたくさん、他人を騙し、盗み、傷付けてきた。
今更、平気な顔をして普通の人間のように振舞う気にはなれなかった。
約束だけ済ませたら、さっさと逃げてやる。こんな変な奴らと、つるんでいられるか。
金を出してくれるから、言うことを聞いているだけだ。そう自分に言い聞かせた。



まだ太陽は昇っていない。ふたりはまだ寝ているようだ。
二度寝しようかと思ったが、どうもしっかりと目が覚めてしまったようだ。
朝の空気でも吸おう。
オレは部屋から出て、外を歩くことにした。

少し歩いたところで、声をかけられた。
「おはようございます!」
元気よく挨拶してきたのは、小さい男の子だった。
眼鏡の少年だ。
新聞をたくさん持っている。新聞配達をしているらしい。
「あぁ、おはよう。」
「はい、この宿屋の分!」
「そうか、オレが渡しておくよ。ありがとう。」
男の子から、新聞を受け取った。

ちょっと読んでみようかと思ったが、オレは字はほとんど読めなかった。
全く読めないわけではない。
漁ったゴミが金目のものかどうか、判別するために必要な知識だった。
しかし、ラベルや刻印の単語を読むくらいで、文章を読んだことはなかった。
オレは、写真だけ見てみることにした。

「あ、これは……。」
写真には、見覚えのあるものが写っていた。
「『イエロー・スラッグ』墜落」
あの飛行機の墜落事故の記事のようだった。
憲兵か何かが、捜査しているんだろうな。
俺たちが犯人だと思われないだろうか?
少し心配になった。
まさか、そんなことないか。

「その写真に見覚えがあるみたいね。」
聞き覚えの無い女の声がした。
振り向くと、声の主は、オレのすぐ後ろにいた。
「うわ!誰……。」
思わず飛びのいた。
だが、それより早く、肩を抑えられ、口を塞がれた。

「大きな声で騒がないで。困るのはあなたたちよ。」
「……?」
オレは、恐る恐る女を見た。
女は、背が低く、透き通るような青い眼と、金色の長い髪をしていた。
そして何より特徴的なのは、その長い耳だった。
噂には聞いたことがある。
長耳族と言われている種族だ。正式名称は、知らなかった。

「大丈夫かしら?手を離すわ。騒がないでね。」
オレは小さく頷いた。
すると、女はあっさり手を離した。
「単刀直入に聞くわね。あなたたちが、『イエロー・スラッグ』を墜としたの?」
「え……?」
突然のことに、困惑する。
まさか、本当に憲兵が来たのか?
だが、目の前の女は憲兵には見えない。
オレは、正直に答えるべきか迷ったが、黙っていることにした。

女は、自分がどうやってここに来たのか、話し始めた。
「私はこの国の災害事故調査室で、副室長をしているの。事故や事件を調べる仕事。」
「『イエロー・スラッグ』の事故も、うちが調査を担当することになったわ。」
「でも、軍が一番大事な証拠を持って行っちゃったのよね。それじゃあ、まともに調査できないじゃない。」
「それで、まともに調べるのはやめて、現場の周りをうろついてたの。」
「歩き回ってたら、見つけたのよね。消えかけてるバイクのタイヤの跡。」
「タイヤの跡を、辿ってきたのよ。そしてこの街にね。そうしたら……。」
「一人用のバイクで歩き回って、たくさん買い物をしている三人組がいたの。変よね。」
「あなたたちよね?あの現場にいたのは。」

あのふたりは、荷物が人に見つからないように気を付けているようだった。
余計な事を話せば、ボロが出るかもしれない。
オレはまだ、黙っていることにした。
口止めはされていないが、公にバケモノの話をするのは、避けたほうがいいと察していた。

「あなたたちが何者でも、大丈夫よ。軍や憲兵に突き出すつもりはないわ。」
「……。」
「お金に困っていないかしら?隠れる場所とか。」
「?」
よくわからないことを言い出した。
犯人を捜しに来たんじゃないのか?
この女の目的がわからなかった。

「何か困ったことがあれば、ここに連絡して。」
メモを渡してきた。
『災害事故調査室』と書いてある。それと、番号が二種類と、長い文字列。
「電話番号と、郵便番号と、住所。いつでも大丈夫よ。」
さらに、分厚い封筒も渡してきた。
「お金が入っているわ。好きに使ってね。」

ますます意味が分からない。
なぜ、怪しい三人組に、金や連絡先を渡すのだろうか。

「この街だと、四番街のあたりは、避けたほうがいいかしらね。憲兵が多いから。」
「一人乗りのバイクは、やめたほうがいいわよ。もっと大きな車にしなさい。そのくらいあれば、足りるわよね。」
「職業も、紹介してあげる。別に働かなくても、お金だけあげるけど。ただでお金を受け取りづらいものね。」
「『イエロー・スラッグ』の調査情報で、知りたいことがあれば、あとで教えてあげる。他の事件でもいいわよ。」

次々と意味の分からない言葉が口から出てくる。
ついに、オレは声に出してしまった。
「なんでだ?お前は、何がしたいんだ?」
女は答えた。
「本当のことを、知りたいだけよ。憲兵が絡むと、面倒臭いもの。」
「調査室って、国の仕事じゃないのか?こんなことをして、いいのか?」
女は首を傾げた。
「ダメに、決まってるじゃない。」

「今回も、帰ったら怒られるわね。」
女はため息をついた。
「国なんて、知らないわ。私は私のやりたいようにやるだけよ。」
「なんなんだ、一体……」
「オレたちを捕まえないのか?」
「捕まえてほしいなら、そうするわよ。」
「……。」
「あなたたちのことは、誰にも言わないし、通報もしないわ。安心して。」
「……わかった。」
オレは、女を信じることにした。
「オレは、パニールだ。あんたの名前は?」
女は、少し考えてから言った。
「私は、ミュース。また会いましょうね。パニールくん。」
女は、あっさりと去って行った。

「何だったんだろうね?」
「さぁ……え?」
「まあ、いいか。ラッキーだね。お金をたくさん貰えて。」
聞き覚えのある女の声がした。
振り向くと、声の主は、オレのすぐ後ろにいた。
「うわ!いつのまに……。」
思わず飛びのいた。
だが、それより早く、封筒を抑えられ、奪い取られた。

「大きな車がいいね。荷物の置き場に困らないし。」
「……?」
オレは、恐る恐るフロマージュを見た。
「背が高くて、悪路でも走れるタイヤと、長い走行距離が欲しい。」
「そして何より大事なのは、乗り心地。」
「この町の近くには、工場があると聞いたよ。行ってみよう。」
フロマージュは、どんな車を買うかを考えるのに、夢中なようだった。

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プロフィール
HN:
装甲兵
年齢:
32
HP:
性別:
男性
誕生日:
1992/04/25
職業:
妖精
趣味:
遊戯王・ポケモン
自己紹介:
マイナーポケモンネタデッキが好き
弱いからではなく、強いから好き

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