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A-1話「掃除屋」
A-2話「厄介者」 A-3話「人形師」 A-4話「歴史書」 A-5話「町工場」 *** ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= *** スターテイル A-4話 「歴史書」 *** ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= *** 忙しそうに歩き回る者。苦しそうに眉を顰めて書類を見つめる者。 装置の作動音と、ペンを走らせる音だけが静かに響いている。 「いったいどこに行ったんだ?もう、何日も戻ってこないじゃないか。」 男は不機嫌そうに、ここにいない人間の文句を言う。 男の名はセイファート。 この国で最も権威のある科学者であり、優秀な技術者でもある。 この男は今日も、特に用事もないのに、調査室に文句をつけるために来ている。 いつも不機嫌そうな顔をしているが、内心、不祥事のネタが手に入ることを喜んでいる。 調査員たちは皆、そのことをよく知っていた。 「副室長ですか?会議とか、言っていたような……」 「さっき、そこにいませんでした?」 調査員は皆、適当な言い訳で済ませている。 副室長はいつも勝手にいなくなる。もう慣れたものだった。 しかし、今回は違う。今までとは違うのだ。 「本当に、どこへ行ったんだ?」 この男が、こんなに副室長を探しているのには、いつもとは別の理由がある。 実は、数日前、とんでもない事件があった。 『生きる歴史書』と呼ばれる天才考古学者が殺され、大量の先史遺産が奪われたのだ。 この事件で帝国軍は大混乱に陥り、戒厳令が出た。 先史人類による超科学。先史遺産は危険な存在であり、厳重な警備が敷かれていた。 それが破られたのだ。警備を怠っていたわけではなかった。 部屋から出てこないのを不審に思った召使いが、部屋の鍵を開け、発覚した。 その時、考古学者は既に、焼け焦げた死体となっていた。 墜落した『イエロー・スラッグ』の調査も重要だ。 だが、『生きる歴史書』の事件のほうが、事態は差し迫っていた。 あの量の先史遺産があれば、小さな国ひとつ滅ぼすことなど、訳はない。 考古学者が研究していたそれらの先史遺産は、武器や兵器ではなかった。 一般の家庭で使うような農機具や、スポーツ用品の類だ。 しかし、この時代の人類の技術からすれば、その性能は真に恐るべきものだった。 エネルギー出力も、耐久力も、まるで格が違う。 顧客に配慮された設計のため、使用者の身の安全は保障されている。 現代の武器では、いくら攻撃しても、使用者に汚れひとつ付けることもできないのだ。 先史遺産には、先史遺産でしか対抗できなかった。 「まさか、王国が戦争を仕掛けてくるなんてことは、ないだろうな……」 セイファートは不安そうに呟く。 広大な海を支配する、海の王国『クロアキナ』。 帝国と王国は、直接の戦闘はなかったものの、昔からずっと、いがみ合っていた。 王国は、最近やけにおとなしかった。 先史遺産を奪う好機を窺っていたのでは……。 男は、自分の席に戻り書類を確認し始めた。 仕事のできない人物。 実力は間違いないが、その功績はほとんど人から奪ったもの。 副室長が室長にならないのにこの男が室長の座に就かないのは、この男が要職に向かないからだった。 上の命令通りに従順に動いているだけのセイファートは、上層部からも信用されていなかった。 立て続けに起こる異常事態への対応は、この男では全く手に余った。 今回は本当に、ほとほと困っていた。 助けてくれ、副室長……。 頼む!早く帰ってきてくれ! セイファートは、溜まった書類を特に処理するでもなく、ただ天に祈っていた。 *** ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= *** まだ太陽が昇っていない薄暗い空が、わずかに青い輝きを取り戻していく。 ここは宿屋の一室。オレは、ベッドの上で目を覚ました。 昨日は街を歩き回り、ずっと荷物持ちをさせられていた。 あの後、オレは疲れて眠ってしまったようだ。 服は、元通り着せ替えられていた。 寝ている間、ずっと変な格好をさせられているのは、流石に不憫だと思ってくれたのか。 街を歩いている間は、ふざけた格好を晒し者にされていたわけだが……。 散々玩具にはされていたが、悪い気はしなかった。 怒鳴られたり殴られたりしない。 憲兵や他の掃除屋から追いかけられたりもしない。 ゴミを漁ったりドブに潜ったりしなくていい。 平和な時間を過ごすのは初めてだった。 いつでも逃げる機会はあった気がするが、逃げようとは思わなかった。 こうやって安らかな時間を過ごすのが、本来の人間の生活なんだと感じた。 しかし、そんな甘い考えをしている自分が、嫌だった。 人間なんて、自分のために人を傷つけるし、簡単に裏切るものだ。 オレだって、今までたくさん、他人を騙し、盗み、傷付けてきた。 今更、平気な顔をして普通の人間のように振舞う気にはなれなかった。 約束だけ済ませたら、さっさと逃げてやる。こんな変な奴らと、つるんでいられるか。 金を出してくれるから、言うことを聞いているだけだ。そう自分に言い聞かせた。 まだ太陽は昇っていない。ふたりはまだ寝ているようだ。 二度寝しようかと思ったが、どうもしっかりと目が覚めてしまったようだ。 朝の空気でも吸おう。 オレは部屋から出て、外を歩くことにした。 少し歩いたところで、声をかけられた。 「おはようございます!」 元気よく挨拶してきたのは、小さい男の子だった。 眼鏡の少年だ。 新聞をたくさん持っている。新聞配達をしているらしい。 「あぁ、おはよう。」 「はい、この宿屋の分!」 「そうか、オレが渡しておくよ。ありがとう。」 男の子から、新聞を受け取った。 ちょっと読んでみようかと思ったが、オレは字はほとんど読めなかった。 全く読めないわけではない。 漁ったゴミが金目のものかどうか、判別するために必要な知識だった。 しかし、ラベルや刻印の単語を読むくらいで、文章を読んだことはなかった。 オレは、写真だけ見てみることにした。 「あ、これは……。」 写真には、見覚えのあるものが写っていた。 「『イエロー・スラッグ』墜落」 あの飛行機の墜落事故の記事のようだった。 憲兵か何かが、捜査しているんだろうな。 俺たちが犯人だと思われないだろうか? 少し心配になった。 まさか、そんなことないか。 「その写真に見覚えがあるみたいね。」 聞き覚えの無い女の声がした。 振り向くと、声の主は、オレのすぐ後ろにいた。 「うわ!誰……。」 思わず飛びのいた。 だが、それより早く、肩を抑えられ、口を塞がれた。 「大きな声で騒がないで。困るのはあなたたちよ。」 「……?」 オレは、恐る恐る女を見た。 女は、背が低く、透き通るような青い眼と、金色の長い髪をしていた。 そして何より特徴的なのは、その長い耳だった。 噂には聞いたことがある。 長耳族と言われている種族だ。正式名称は、知らなかった。 「大丈夫かしら?手を離すわ。騒がないでね。」 オレは小さく頷いた。 すると、女はあっさり手を離した。 「単刀直入に聞くわね。あなたたちが、『イエロー・スラッグ』を墜としたの?」 「え……?」 突然のことに、困惑する。 まさか、本当に憲兵が来たのか? だが、目の前の女は憲兵には見えない。 オレは、正直に答えるべきか迷ったが、黙っていることにした。 女は、自分がどうやってここに来たのか、話し始めた。 「私はこの国の災害事故調査室で、副室長をしているの。事故や事件を調べる仕事。」 「『イエロー・スラッグ』の事故も、うちが調査を担当することになったわ。」 「でも、軍が一番大事な証拠を持って行っちゃったのよね。それじゃあ、まともに調査できないじゃない。」 「それで、まともに調べるのはやめて、現場の周りをうろついてたの。」 「歩き回ってたら、見つけたのよね。消えかけてるバイクのタイヤの跡。」 「タイヤの跡を、辿ってきたのよ。そしてこの街にね。そうしたら……。」 「一人用のバイクで歩き回って、たくさん買い物をしている三人組がいたの。変よね。」 「あなたたちよね?あの現場にいたのは。」 あのふたりは、荷物が人に見つからないように気を付けているようだった。 余計な事を話せば、ボロが出るかもしれない。 オレはまだ、黙っていることにした。 口止めはされていないが、公にバケモノの話をするのは、避けたほうがいいと察していた。 「あなたたちが何者でも、大丈夫よ。軍や憲兵に突き出すつもりはないわ。」 「……。」 「お金に困っていないかしら?隠れる場所とか。」 「?」 よくわからないことを言い出した。 犯人を捜しに来たんじゃないのか? この女の目的がわからなかった。 「何か困ったことがあれば、ここに連絡して。」 メモを渡してきた。 『災害事故調査室』と書いてある。それと、番号が二種類と、長い文字列。 「電話番号と、郵便番号と、住所。いつでも大丈夫よ。」 さらに、分厚い封筒も渡してきた。 「お金が入っているわ。好きに使ってね。」 ますます意味が分からない。 なぜ、怪しい三人組に、金や連絡先を渡すのだろうか。 「この街だと、四番街のあたりは、避けたほうがいいかしらね。憲兵が多いから。」 「一人乗りのバイクは、やめたほうがいいわよ。もっと大きな車にしなさい。そのくらいあれば、足りるわよね。」 「職業も、紹介してあげる。別に働かなくても、お金だけあげるけど。ただでお金を受け取りづらいものね。」 「『イエロー・スラッグ』の調査情報で、知りたいことがあれば、あとで教えてあげる。他の事件でもいいわよ。」 次々と意味の分からない言葉が口から出てくる。 ついに、オレは声に出してしまった。 「なんでだ?お前は、何がしたいんだ?」 女は答えた。 「本当のことを、知りたいだけよ。憲兵が絡むと、面倒臭いもの。」 「調査室って、国の仕事じゃないのか?こんなことをして、いいのか?」 女は首を傾げた。 「ダメに、決まってるじゃない。」 「今回も、帰ったら怒られるわね。」 女はため息をついた。 「国なんて、知らないわ。私は私のやりたいようにやるだけよ。」 「なんなんだ、一体……」 「オレたちを捕まえないのか?」 「捕まえてほしいなら、そうするわよ。」 「……。」 「あなたたちのことは、誰にも言わないし、通報もしないわ。安心して。」 「……わかった。」 オレは、女を信じることにした。 「オレは、パニールだ。あんたの名前は?」 女は、少し考えてから言った。 「私は、ミュース。また会いましょうね。パニールくん。」 女は、あっさりと去って行った。 「何だったんだろうね?」 「さぁ……え?」 「まあ、いいか。ラッキーだね。お金をたくさん貰えて。」 聞き覚えのある女の声がした。 振り向くと、声の主は、オレのすぐ後ろにいた。 「うわ!いつのまに……。」 思わず飛びのいた。 だが、それより早く、封筒を抑えられ、奪い取られた。 「大きな車がいいね。荷物の置き場に困らないし。」 「……?」 オレは、恐る恐るフロマージュを見た。 「背が高くて、悪路でも走れるタイヤと、長い走行距離が欲しい。」 「そして何より大事なのは、乗り心地。」 「この町の近くには、工場があると聞いたよ。行ってみよう。」 フロマージュは、どんな車を買うかを考えるのに、夢中なようだった。 *** ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= ☆-= *** A-1話「掃除屋」 A-2話「厄介者」 A-3話「人形師」 A-4話「歴史書」 A-5話「町工場」 PR |
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プロフィール
HN:
装甲兵
年齢:
32
HP:
性別:
男性
誕生日:
1992/04/25
職業:
妖精
趣味:
遊戯王・ポケモン
自己紹介:
マイナーポケモンネタデッキが好き
弱いからではなく、強いから好き
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