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A-1話「掃除屋」

A-4話「歴史書」
A-5話「町工場」
A-6話「」

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スターテイル A-5話 「町工場」

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軒先の人に渡す。
ポストに入れる。
歩く、走る、曲がる。
これで最後だ。
手元にひとつ残った新聞を、郵便受けにねじ込む。
僕はいつものように、配達を終えた。
今日は、給料日だ。
試用期間が終わって、明日からは配達戸数あたりの給料を、上げてくれると言っていた。
今日の給料はまだ安いが、よく働いているから、ボーナスを少しくれるそうだ。
でも、貧乏だからな。たぶん、お金ではないだろう。
先輩のお下がりで、なにかカバンでも、貰えるんじゃないかな。

僕は営業所に戻り、荷物を片付けた。
眼鏡に付いた砂埃を拭き取る。
所長はどこに行ったんだろう?
営業所を出た時には、所長は忙しそうに何か計算をしていた。
誰か、支払いを滞納していたのかな。
所長にとって、新聞代の滞納者に取り立てに行くのは、いつものことだった。

「お疲れ様です!」
後ろから、誰かに声をかけられた。
振り返ると、見たことのない男が立っていた。
黒い髪の男だ。
年は、二十代前半くらいだろうか。
この街ではあまり見かけない、しっかりとした黒いスーツを身に纏っていた。
靴も黒いし、カバンも黒い。その男は黒ずくめだった。

「こんにちは。私は、『災害事故調査室』の者です。」
男は、名刺を翳しながら、胸元のバッジを摘んで見せた。
「災害事故調査室?」
こんなところに、何の用だろうか?
「所長なら、いませんよ。」
「ああ、そうですか……どのくらいで戻るでしょうか?」
男は、苦笑しながら言った。
「さあ、わかりません。でも、昼ご飯は必ず食べる人ですよ。昼には戻るかも。」
「うーん、昼まで待つしかないですか……仕方ない。」
「僕でよければ、話を聞きますよ。」
「おお、助かります。私は、この前の『イエロー・スラッグ』の事故で、目撃者を探しているんですよ。」
あの飛行機の事故か。新聞の一面に載っていた事故だ。
ここ数日は、その話題で持ちきりだった。

「それで、この街の話を聞かせて欲しいんです。新聞屋さんなら、地域のことに詳しいと思って。」
「はい。いいですよ。今日の仕事は、終わりましたから。」
「本当ですか?」
「ええ。」
「ありがとうございます。それじゃあ、こちらへ……」
男の後に付いて行くと、近くの喫茶店に入った。
「コーヒーをふたつ、お願いします。」
「コーヒー、僕は苦手なんですよ。水でいいです。」
「おや、そうでしたか。これは失礼しました。」
男は、さらにサンドイッチをふたつ注文した。
不愛想な店員は、メモを取ると、無言で店の奥に去って行った。



「それで、聞きたい事って?」
「はい、この街のことを、お尋ねしたいのです。ここ数日で、変わったことはありませんか?」
「変わったこと?」
「例えば、事件があったとか、知らない人が歩き回っているとか。普段と違うことです。」
「うーん、事件は、とくにないですよ。それと、知らない人なら、たくさん歩き回っています。」
この街は、宿場町だった。
この土地は、特に何もない場所だ。
しかし、交易のためのキャラバンや、帝国軍の連絡隊、遺跡の発掘団など、様々な移動ルートの交差する場所だった。
何もなかったこの土地は、交通の要所として、発展を遂げていた。
人の行き来の多いこの街では、知らない人が歩いていることは、普通のことだった。

「配達で歩き回っていて、世間話もするけど、目撃者とかも、特にいなかったと思いますよ。」
「そうですか……。」
男は残念そうだった。
「災害事故調査室って、どこにあるんですか?」
「首都ですよ。ペロタンの向こうです。」
「そんなに遠くから?」
首都は、西のクレーターの向こう側にある。
「ええ、でも、『イエロー・スラッグ』の事故現場よりは、近いですから。」
そういえば、事故現場は東のほうだった。

「東のほうから来た旅行者を見た覚えはないですか?大きな荷物を持っていたとか。」
「ああ、それならいたと思いますよ。関係あるか、わかりませんけど。」
あの宿屋にいた、三人組。
一人乗りのバイクに荷物を載せて、買い物をしていたな。
楽しそうに服を買っていて、とても事故や事件には関係なさそうだったけど。
「本当ですか?少しの情報でも助かります。ぜひ案内してください。」
「わかりました。まだ宿屋にいると思いますよ。」
僕は、調査室の男を案内するために席を立った。

「あなた、フェブリフじゃない?こんなところで合うなんて、奇遇ね。」
道を歩いていると、後ろから女の声がした。
振り向くと、透き通るような青い眼の、金色の長い髪の女がいた。
長耳の人だ、珍しいな。
多くの人が行き来するこの街でも、あまり見かけることはなかった。

「あれ、副室長。なぜここに?現場に行ったのでは……」
調査室の男は呆気に取られているようだった。
「また、抜け出してきたんですか?」
「ええ、スイートポテトを食べに来たの。ここの名物よ。」
女は有名な菓子店の紙袋を男に掲げて見せた。
香ばしい、いい匂いがする。
サンドイッチを食べたばかりだが、もうお腹が空いてきた。

「副室長、そんなことしてる場合じゃないですよ。今回の事件は……」
「どう?何か手掛かりは見つかった?」
「ああ、はい、この子に連れて行ってもらうところです。」
「この子に?」
女は僕の顔をじっと見つめてきた。
「東から来た三人組がいると言うので、一応話を聞いてみようかと。」
「へえ、何か聞けるといいわね。私も付いていこうかしら。」
「はい、お願いします。ちょっとは働いてくださいね。」
女も付いてくるようだった。
男の上司のようだが、スイーツを食べ歩いて仕事をサボっているような適当な女だ。
堅い雰囲気だったが、この女が混ざってきたことで少し気楽になった。

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土と金属と油の匂い。

オレとラジィを乗せたバイクは、大通りから離れ、少し奥まった路地を進んでいた。
自動車は高級品だ。あまり綺麗な新品の車を乗り回していたら、不審に思われる。
なるべく見た目がボロボロで、中身はしっかりしている中古の車を探して買うことにした。
かっこいい車を欲しがっていたフロマージュは、不服そうだった。
しばらく新作の車をプレゼンしていたが、彼女は諦めて留守番をすることになった。

「……ここかな?」
ラジィはバイクを止めた。
オレたちは、とある町工場の前に立っていた。
崩れた壁と屋根の隙間から、薄暗い光が差し込んでいる。
ここなら、朝早くから職人が働いていると聞いていた。
ジャンク品を集め、修理して組み立てた車を売っているらしい。
オレが砂漠の掃除屋をやっていた時も、こういったボロボロの工場に、よくジャンク品を売っていた。

ラジィは工場の扉を開け、顔を突っ込んだ。
「すみません、誰かいますか?」
声が響く。砂漠で朽ち果てた廃墟のように、静かだった。
「誰もいないみたい。」
「おかしいな。扉には鍵が付いているのに、かかってない。」
「出かけてるのかな?」
「待っていれば戻ってくるかもしれない。ここで待つことにしよう。」
「うん、そうだね。」
オレたちは、入り口の前でしゃがみこんだ。

辺りを見回すと、壊れた車や、エンジンのようなものが転がっている。
今は、完成品は無いのだろうか?
工場や、別の倉庫の中にあるのかもしれない。
工場の中を見てみようかとも思ったが、勝手に入るのはまずい。
大人しく、時間を潰すことにした。

「どんな車にするんだ?」
「えーっと、荷物が載せられれば、大丈夫だよ。あとは、壊れにくいのがいいかな。」
「速さとかは、いいのか?」
「うーん、速い方がいいんだけど、でも、目立っちゃうよ。」
「なんだ、そんなこと気にしてるのか。大丈夫だよ。速く走れる車でも、ゆっくり走ればいいだけじゃないか。」
「ダメだよ。私、運転ヘタだから、そういうのできません!」
そういえば、いつもバイクのアクセルはベタ踏みだった。
車なんて運転して、大丈夫なのかな……。
バイクに乗れるのはラジィだけだったから、今までラジィが運転していたけど。
車を買ったら練習して、オレかフロマージュが運転したほうが、いいかもしれない。

「車が用意出来たら、どこに行く?元々は、どこに行くつもりだったんだ?」
「首都のほうに、魔法の学校があるんだ。そこで勉強しようかなって。」
ラジィは、魔法使いになるために、魔法の勉強中と言っていた。
世界を救うために、偉大な魔法使いを目指しているそうだ。
「学校って、行っても大丈夫なのか?ちゃんと入学できるのか、わからないだろ。」
「わからないよ。だから、行ってみるの。」
「そんな遠くまで、わからないけど行ってみるのか?」
「だって、他に何も思いつかないよ。」
「まあ、そうだけどさ。」
ラジィは、行動してから考えるタイプらしい。

オレたちが初めて会った時も、そうだった。
どうするのか方法も聞かずに、フロマージュの言う通りにして、一緒にバケモノを倒したそうだ。
オレはその時、悲鳴を上げながら逃げまわったり、気を失っていたから、見ていないが……。
一緒に行動したり、話をしていると、ラジィは確かに、そんな感じだ。
人の言うことをすぐに信じて、疑わないようだ。

「それに、私、もっといろんな世界を見たいし。他の国にも行ってみたいな。」
「じゃあ、旅しながら自分で勉強すればいいんじゃないか?オレも付いていくし。」
「えっ、付いてきてくれるの?」
「当たり前だろ。オレも、他に何も思いつかないからな。」
「えへへ、ありがとう。」

ラジィはこの後も、人助けのために、魔法の勉強を続けるらしい。
フロマージュは、どうするつもりなんだろう。
殺された人形師とは、仲が良かったのかな?
だとしたら、その犯人は、仇ってことになる。
犯人を、捜しているのかな。それとも、盗まれた人形だろうか。
たぶん、どっちもだろう。
旅をしながら、一緒に探してやろう。

ふたりの目的は、だいたい、わかった。
問題は、オレ自身だ。今言った通り、何も思いつかない。
だが、それは仕方ないと思った。
ずっとゴミを漁って売るだけの生活だったオレは、世の中のことを何も知らなかった。
今日、明日、明後日をどうやって食っていくかで精いっぱいで、それ以外、考えたことがなかった。
ふたりと一緒に旅をしながら、考えよう。
こんな奴らからは、そのうち逃げ出すつもりだった。でも、それは、しばらく後回しになりそうだ。

オレたちは、工場の前で座ったまま、話をして時間を過ごした。
しかし、結構時間が経ったが、人が戻ってくる気配はない。
「まだ、来ないのかな?」
「もう、一時間は経ったぞ。変だな。」
少し、嫌な予感がした。
何か事件でもあったのだろうか。
「ちょっと、中に入ってみよう。病気で倒れてるのかも。」
「そうかも!じゃあ、急いで見てみよう。」
「ああ、行こう。」
オレとラジィは立ち上がり、工場の中に足を踏み入れた。
中は薄暗く、埃っぽい匂いが充満していた。



「誰もいないね。」
「うん、どこにいるんだ?」
工場の、埃や油の匂いに混じって、変な匂いがした気がした。
何かの薬品かもしれない。ここは工場だ。机や棚には、触らないように気を付けた。
工場の中には、様々な箱や機械があった。
ゴミ漁りで見たことがあるような気がするが、それが何なのかは知らなかった。

オレたちは、奥へと進んだ。すると、突然ラジィが大きな声で叫んだ。
「待って!」
オレは、声に驚いて、立ち止まった。
そして、後ろを振り向くと、そこには黒い大きな塊があった。
「なんだ!?」
オレが叫ぶと、ラジィがオレの腕を思いっきり引っ張る。
「動かないで!」
ラジィに引っ張られて、後ろに下がる。
すると、その黒い物体は動き出し、こっちに向かってきた。

ラジィが前に出て構えると、呪文を唱えた。
左手の指輪が、赤い光を放つ。



「星よ集まれ!獣よ歌え!牙の輝きよ、光の矢となりて……」

黒い影が、視界を横切った。

出来上がりつつあった赤い光の矢は、砕け散った。

代わりに赤い鮮血が視界を染め上げる。

黒い影は、ひとつではなかった。
明かりの無い工場の闇の中には、無数の目が光っていた。


そのバケモノは、
魚の形に似ていた。

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装甲兵
年齢:
32
HP:
性別:
男性
誕生日:
1992/04/25
職業:
妖精
趣味:
遊戯王・ポケモン
自己紹介:
マイナーポケモンネタデッキが好き
弱いからではなく、強いから好き

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